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安全保障法案(なんぼなんでもだめだろう法案)の論戦に学ぶ、多数を形成する主張の仕方 [事務所生活]

安全保障法案(なんぼなんでもだめだろう法案 
略して「なんなん」法案といいます。)について、
私は中立ではなく、反対の立場です。
公正を期するために初めに断わっておきます。

反対の理由は、
憲法9条がありながら集団的自衛権を行使するということは、
立憲主義に反するからです。
個人的な政治、思想、信条からではなく
法律家の立場から、なんぼなんでもだめだろうと
反対しているわけです。

立憲主義に反するのはなぜだめかというと
日本を二流国に転落させることになるからだという
愛国者的観点からということになります。

そうして
なんなん法案を成立させてしまって
自衛隊を人殺しの助けをするような活動をさせず、
これまでどおり、これからもずうっと
自衛隊が、人間の命を救助する組織でありつづけてほしいのです。

このなんなん法案ですが、
推進している勢力が、自民党、公明党、その他
それから、表立って推進していないけれど、
審議を進めて、事実上成立に力を貸すかもしれない
そういう政党も出てきており、
国会では、圧倒的多数が推進していることになっています。

しかしながら
憲法学者200名以上の反対
憲法審査会における3学者すべての違憲であるとの表明
及ばずながら弁護士会の反対活動
各種デモの報道などがあって、
「潮目がかわった」とも言われています。

フェイスブックなどでのSNSでも反対が表明されています。

ただ、このままでいけば、
善戦むなしく法案成立という
いつかみた事態が繰り返されることが心配されるところです。

というのも、これまで反対している人たちが記事をアップして、
これまでもその人に賛同している人たちが記事をシェアして、
いつもと同じ光景が見られているように感じるのです。

(野党間の協力も、
 どうも、立憲主義の危機という危機感が感じられない。
 消費税値上げ反対と同程度のような扱いのように
 感じられてなりません。)

要するに、これまでも反対していた人と
これまでも反対していた人にシンパシーを持っている人だけが
反対しているのではないかという感覚があるわけです。

何といっても、この期に及んで、
安倍内閣の指示は45%もあるのです。
このままで、法案が撤回される要素は逆にないのです。

なんで立憲主義が踏みにじられているのに、
安倍内閣の支持率は高いのでしょう。
ここを早急に考えなければなりません。
自民党が強かったとか
マスコミが偏向していたとか、
誰が裏切ったとか
そういう負け犬の遠吠えを準備していてはいけない深刻な問題なのです。

これまでの反省をする場合は、
自分たちに何が足りなかったか、
それをどう克服するかという視点で行わなければなりません。

自民党は強いままでしょうし、
安倍首相の飲み仲間が率いるマスコミの偏向は止まらないでしょう。

立憲主義の危機に
こんな203高地の突撃を繰り返していてはだめだと思います。

推進する政府与党はどういっているのでしょう。

中谷防衛大臣が、
「憲法を法律に適合させている」と言ったのは、
おそらく言い間違いでしょう。
これはだめな例です。

菅官房長官が
「著名な憲法学者は一杯いる」といいながら
一杯の点を突っ込まれると
「数の問題ではないと思う」というのも
ダメな例です。

この二人は、推進勢力の足を引っ張りました。

高村氏や谷垣氏が、
砂川基地訴訟を持ち出して、
「最高裁判所も合憲だと言っている」といっていますが、
これは大変わかりやすい説明です。
判決文を引用していますが、
具体的にどこがどう合憲といっているかわからなくていいんです。
ほらこの通りといえればいいんです。
そうすると、
政府を支持したい人々は、安心するのです。

高村氏や谷垣氏は、弁護士で、その意味で私の先輩です。
自分の言っていることが、
法律的に見て成り立たないことは百も承知です。
また、
こんなことを言ったら、法律家からは呆れられる
弁護士のバッチを外せといわれることも
百も承知です。
なりふり構わずに、恥を感じずに言い切る
という姿勢は、あっぱれとすら思います。
多数を形成するための行動ということになります。

これに対して、
砂川判決の見方が間違っているとか
いろいろ理屈で対抗していては、
法律的知識のない人たちは途中下車をするわけです。
法律家内部での打ち合わせを
国民一般にすることはどだい無理があります。
どこかでは言っておいてもいいけれど
それは「後でゆっくり読んでください」の程度にとどめるべきです。

では、どうすればよいのか。

その前に、どうして、このような理のない政権の主張に
圧倒的国民は反対しないのでしょうか。
どうして安倍首相を半分くらいの人が支持しているのでしょうか。
このことを考えない野党は、万年野党でしょう。

こういうことを考えない野党の人たちは、
「自分たちは正しいことを言っている、
明らかに政権は間違っている。
それなのに政権党に投票する人たちは
どうしようもない。」
等と考えているのかもしれません。

正しいことを言えば、
それに国民は賛成するべきだというのです。
精神的DVをしている夫のような論理です。
国民を見ていないのです。

国民は、自分の国の、自分たちの総理大臣の
悪口を言われること自体に反感を持つものです。
批判をしている方に面識があるならば、
聞く耳を持とうとするかもしれませんが、
どこの誰だかわからない野党議員が、
自分たちの首相を批判していたら、
まずは、反感を持つのだとということを覚えましょう。

次に、国民の大多数は、
ケンカが嫌いです。
政府与党を追及している人たちが、
すごい剣幕でいきり立っているのを見ると、
つい、責められている政府に肩入れして、
何とか反論するとよしと思い。
黙っちゃうと、かわいそうに思うわけです。

せっかく頑張っているのに
どうして足を引っ張ることをしようとしているのだ
という気持ちになるわけです。

圧倒的多数の国民は、
その法案の是非善悪を考える前に、
自分たちの国の政府を信じたい
日本人であることを誇りたいのです。

また、批判するのはいいけれど、
では、政府を打倒してどうするのと、
誰も知らない人ばかりが政権を取ったら
日本はどうなるの
という不安が起きるわけです。

前にも書きましたが、
自民党の議員さんは、チーム力を生かして、
その議員さんのことはわからないけれど
議院さんの秘書さんや自治体の議員さんはよくわかっている
自分たちの代表として国会に送っているという
という意識を、有権者に持ってもらっています。
正しいか間違っているかということよりも、
自分たちの感情や願いを大事にしてくれる
という信頼感があるわけです。

そして、野党を批判するよりも
自分たちの実績を誇らしげに宣伝する。
それでいいのですから、
元々支持している人たちは反発しませんよね。
国民の感情を大事にして
投票に結びつけ、支持に結びつけているわけです。

どこかの知らない人ではなくて
お世話になっている人の関係者ということですね。

そして、人数が多く、大きな政党ということで
安心を持つわけです。

こういうアドバンテージのある政権与党の提出した法案を
ひっくり返すのは並大抵のことではありません。
正さという理屈を並べる以前の話でもあります。
正しいかどうか意見を聞いてもらうことから
努力するべきなのです。

元々味方の人が
味方であることで安心していたのではだめなのです。

まずは、安心感を持つ的がほしいです。
立憲主義を守るということは、
ギリギリの救国戦線の理由になります。
大原則で共同できないのでは、
やはり野党も立憲主義を理解していないのでしょう。

なんなん法案を廃案にするということで
統一候補者名簿を作ることも辞さない姿勢を示すことが必要です。
(実際に作るかどうかは別問題)

政権与党を責める、非難するような国会質問は
実は逆効果かもしれません。
もともと、反対の人にはうれしい限りですが、
政府を信頼している人については逆効果の可能性があります。

そうではなく、日本の共通の利益のためには
なんなん法案はだめだよね
ということを穏やかに教えさとす
という戦略が有効かもしれません。

今の状態は、間違いを暴くことに精いっぱいで、
味方を増やすところまで行っていないかもしれません。
一段高い場所から主張しなければ始まらないと思います。

正さ比べをして、後は国民が悪いではどうしようもないのです。

後は、なぜ反対なのかわかりやすいキャッチフレーズですね。
これも、政府を信頼している国民の大多数を振り向かせるキャッチが必要です。


大多数の国民は、
なんなん法案を成立させても、戦争をしようとは思っていないだろうと
そう考えています。

私もそれは実は同感です。
一足飛びに戦争をしようとしているなら、
政府の説明は矛盾することが多いからです。

リアルに見た場合は、
昨年の閣議決定後に首相が行ったことから照らすと
即ち、閣議決定直後安倍首相は
オーストラリアに原子力潜水艦の日豪共同開発の
セールスにオーストラリアまでいったこと、
中東各国を訪問し、戦闘機のセールスに行ったことからすると
武器輸出をしたいとみないとならないでしょう。
武器輸出をする国が、
戦争放棄をしていたのでは、セールスに差しさわります。

これは憲法改正を待っていられない事情なのでしょう。

それから、なぜ法案を通したいのか、
ここについて、もっと論議が必要です。
法律が成立するとどうなるのでしょう。
一番は、予算が付けられることです。

現在の防衛費も巨大なものですが、
必要最小限度のものだとされています。
我が国を守るので精いっぱいということです。

これをアメリカやらオーストラリアやらイスラエルやらの
軍隊を守るとなると、
これまでの武器(軍艦、戦闘機、弾薬等々)ではなく、
集団的自衛権専用の武器が必要となりますから、
一気に予算を付けなくてはならなくなります。

今の軍備の中で、自国本土の防衛と
外国での作戦とをやりくりすることはできないはずです。

要するに消費税がまた上がるわけです。

また、自衛隊は現在でも定員割れだとされています。
本土を守るのも人員不足だとすると
リアルに戦争が起きている地域での人員配置は
さらに隊員を増やさなければなりません。
それで本土防衛を手薄にするわけにはいきませんから
新たに隊員を増やさなければなりません。
どうやって?
具体的方法はバリエーションがあると思いますが、
大きく言えば徴兵で対応することが現実的ということになるわけです。

こういう現実的であり、不可避な派生問題を
もっと議論しなければなりません。

法律案一つとってもメリットとデメリットがあることが普通です。
実際の戦争がなくても
集団的自衛権行使に備えての制度整備が行われるのです。

とても長くなりましたので、
日本が二流国になってしまうということは、
また別の機会にします。





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