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甲状腺ノート(非医療関係者)5うつ病、不安、気分の浮き沈み [進化心理学、生理学、対人関係学]



この章は、甲状腺ホルモンのバランスとうつ病、不安障害、パニック障害の関係を説明しています。うつ病のメカニズム、モノアミン仮説との関係など興味深い説明がなされています。

ほとんどの甲状腺疾患患者では、精神的影響が、精神病の程度に放っていないけれど、大変な苦しみを感じている。
(これも大変示唆的で、この本の素晴らしい所。苦しんでいるのに治療の対象にならなかったり、根治を目指さない対症療法になっている病気があるように感じる。せめて、こういう精神症状が出る、あるいは、今あなたが直面している不具合は病気からくるものだとわかるだけでもだいぶ楽になると思うし、家族もやれることがあるということを理解し、希望を持つことができる)
軽度うつ病:甲状腺の影症候群
生活の中で起こる出来事で、悩んだり、がっかりことは正常な反応です。悲哀は必ずしもうつ病の症状ではない。うつ病での感情、あるいは無感情は、出来事の反応ではない。「落ち込んでなんかいないし、悲しくもない」(無感情)という答えは実際にうつ病特有の症状に苦しんでいるかもしれない。
<うつ病の症状>
断絶感と疲労、食欲の変化や睡眠障害、興味喪失、記憶や集中力の低下。
一般的に、甲状腺ホルモンが減少 → 精神的エネルギーの変化が徐々に出現→不活発、午後には“勢いが衰える”(典型的なうつ病は朝に最もけだるくて、夕方活動できるという日内変動と聞いたが反対なのかな)
疲労の自覚→何らかの病気の不安
エネルギーの欠如→ひどいイライラ、以前のように働けないと感じる→罪悪感や無力感、自尊心の低下
最初疲労や意欲の欠如として現れる軽度うつ病(慢性の気分変調症よりさらに軽いタイプのうつ病)可能性があり。
甲状腺ホルモン:セロトニンのいとこ
セロトニンのバランスの乱れがうつ病を起こす重要なファクター。ほとんどの精神病が脳内の化学物質のバランスの乱れにより起こるのではないかという考えを受け入れることで、医師の精神障害の解釈や治療に大きな変化。精神疾患に対し身体的疾患と変わらない見方をするようになった。
脳の化学作用はそれ程単純ではなく、セロトニンやノルアドレナリン、甲状腺ホルモンを含む他の物質のような複数の化学物質のバランスの乱れが精神症状の原因。
重要な甲状腺ホルモン、T3とT4が血液中に放出 → 臓器の細胞内に入る。
→ 体の主な機能を司るにあたって重要な役割。脳が正常に機能するためにも、生涯を通じて適切な量の甲状腺ホルモンが必要。
甲状腺ホルモンレベルに依存 気分や感情、集中力や記憶、注意持続時間のような認知能力。T3は、本物の脳内化学物質。神経細胞は神経細胞のつなぎ目(シナプス)で、互いに情報の伝達をしている。甲状腺ホルモン(特にT3)は、セロトニンやノルアドレナリン、およびGABA(ガンマアミノ酪酸)のレベルと作用の制御もしている。送り出されるT3の量が適切でなければ脳内のセロトニンレベルが下がる。脳内でのT3の欠乏がノルアドレナリンの化学伝達物質としての働きをも悪くする可能性あり、両者の欠乏がうつ病の化学的原因ではないか。(どの程度の関係なのだろうか。モノアミン(セロトニン、モノアミン、その他)が欠乏する場合、必ずT3の不具合があるというところまで行くのだろうか。T3由来ではないモノアミン欠乏があるのであれば、その機序は、ある程度共通するのだろうか)。
T3が脳細胞間(神経細胞間のシナプスという意味だろうか)に非常に多く集まっているという所見は、T3が正常な気分や行動を維持するために欠かせない脳内化学伝達物質であるという考えの強力な裏付けとなる。T3は、気分、感情、また嬉しいことや悲しいことを知覚する脳の領域である辺縁系により多く見付かる。甲状腺ホルモンとその他の重要な脳内化学物質との類似性もまた目を引く。アミノ酸の一つチロシンは、甲状腺ホルモンと脳内化学物質であるノルアドレナリンおよびドーパミンのどちらにも欠かせない成分。
大うつ病と甲状腺ホルモンバランスの乱れ
一般的に、甲状腺機能低下症 → 軽度うつ病か非定型型あるいは気分変調型の慢性のごく軽いうつ病のどちらかを起こす。これらの軽い、長引くタイプのうつ病のある人は大うつ病に移行する危険性が高い。甲状腺機能低下症に伴う非常な疲労とうつ病が彼らを消耗させ、さらにうつ病がひどくなっていくという終わりのない悪循環。
大うつ病では、患者は自分の周囲からまったく切り離されたようになり、何が起ころうともまったく無関心になる。この断絶感と疲労は午前中の方がひどい。(ああ、これはうつ病としての日内変動ですね。)普通は不眠症になり、食欲の喪失、食べることに興味を失う、体重減少、そして物事に集中できない。生きていくほどの価値はないという考え、自分自身を責め、助けを求めるだけの値打ちのない人間だと思う。そして、ひんぱんに死や自殺のことを考え始める。一部のケースでは、患者が現実から遊離し、幻覚(精神病的特徴を持つうつ病)を見るような場合がある(というかこれが大うつ病エピソードではないのかな。大うつというのはメジャーディプレッション(うつ)の和訳)
重症のうつ病患者の甲状腺疾患をスクリーニングした研究者は、その15%以下に不活発な甲状腺があるが、その不活発な甲状腺がひどいものより、むしろ軽いものの方が多い。(う~んこれでは、むしろうつになる人が多くなるということになってしまうのか。)
重症のうつ病で入院している患者の20%近くが橋本甲状腺炎に罹っている。(橋本病と慢性甲状腺炎は同じなのかな、慢性甲状腺炎の一部なのかな。ここよくわからない)。軽度の甲状腺機能低下症があり、現在大うつ病に罹っていない女性でも、以前1回以上うつ病の症状を経験していることが多い。
軽度の甲状腺機能低下症があると、生活の中でストレスが発生した時に、女性が大うつ病になりやすくなる可能性がある。そのような女性では、軽度の甲状腺機能低下症を治すということは大うつ病発生の予防法としてみるべき。
ほんのわずかな甲状腺ホルモン欠乏が大うつ病を悪化させるという事実
<軽度の甲状腺機能低下症であっても、脳内セロトニンレベル下がる傾向>
<正常パターンは>
セロトニンレベルの低下 → 脳下垂体に伝達 → 脳下垂体はもっとたくさんTSHを作るようになる。→ 甲状腺はもっとたくさんの甲状腺ホルモンを作り、放出。甲状腺の調節作業がセロトニンレベルを元に戻し、気分の落ち込みの歯止め。
<甲状腺機能低下だと>
甲状腺の機能低下 → 脳内化学作用を正常に戻せない、甲状腺ホルモンを作れない → セロトニンレベル低下に歯止めがかからない、うつ病悪化。
うつ病に罹っているか、あるいは最近うつ病を経験したのであれば、甲状腺ホルモンバランスの乱れに関する検査をしてもらうべき。
うつ病からの脱出
甲状腺機能低下症のあるうつの場合、一般的に甲状腺ホルモンバランスの乱れを治せば、うつ病軽快。但し、一部のケースでは、うつ病が甲状腺ホルモン治療だけでは完全によくならない。すでに独自のうつ病。特に不活発な甲状腺が長い間、診断されないままであった場合によく起こる。
処方については省略。
不安障害と甲状腺ホルモンバランスの乱れ
不安障害も甲状腺ホルモンバランスの乱れが引き金、悪化の原因の場合も。

1. 一般的な不安障害:少なくとも6ヶ月間、些細なことに行き過ぎた、大袈裟かつ非現実的な心配をしているもの。
2. パニック障害:極度の恐怖を伴う異常な身体的反応の発作が特徴で、身体症状が起きる。
<不安障害の症状>
対人恐怖症、単一恐怖症(特定のものや状況に対し過度の恐怖を覚えるもの)、強迫行動、外傷後ストレス障害、行き過ぎた非現実的な心配、、落ち着きのなさ、過度の警戒感と緊張感、疲労、なかなか集中できない、怒りっぽさ、筋肉の緊張、そして寝付けないあるいは眠れない。
精神的感情的葛藤がその人の生き方になってしまうことがあり、どこか悪いところがあるなどとは疑いもしない場合がある。
甲状腺機能低下症がかなりの頻度でひどい不安や時にはパニック発作さえも引き起こす。脳のある部位のセロトニン減少とノルアドレナリン活動の増加が呼吸中枢の活動あるいは感受性の増加とあいまって、不安障害の精神的身体的症状を引き起こす。ノルアドレナリンの中脳への刺激が、パニック発作中に経験する心臓や呼吸器系への影響の主な原因。パニック発作に伴う身体的反応は現実のもので、自律神経系により生み出されるものです。
活発すぎる甲状腺 → ノルアドレナリンの活動性を増加 → 不安やパニック発作の症状
パニック発作
パニック発作の症状
心臓がドキドキする。心拍が早くなる。汗をかく。振戦または震え、息が切れる感覚、息が詰まる感じ、胸の痛みまたは不快感、吐き気、めまい、浮遊感、ふらつきまたは気が遠くなる感じ、非現実感または自分が切り離された感じ、コントロールを失いつつあるという恐怖、死にそうだという恐怖、しびれまたはちくちくする感じ、寒気またはほてり
1回だけでもパニック発作を起こした人は、次の発作が起こるのを恐れる。
「医師が患者の症状が現実のものではないとか、“頭の中”にあるものだとかということをほのめかすことが非常に多いのですが、たった今心臓が早鐘のように打ったり、手足にちくちくする痛みを感じたり、めまいや吐き気をおぼえたばかりの人にとっては、こんなことは何の助けにもなりません。」(なるほど。)
「体にはどこも悪いところはありませんよ」これがさらに患者を困惑させる。自分の症状が現実のものであることが分かっているから。
本記事は田尻クリニック様のホームページに掲載されているhttps://www.j-tajiri.or.jp/
「書籍の翻訳」の中の「甲状腺の悩みに答える本」の読書ノートです。
• 原題と著者は、[The thyroid solution] by Ridha Alemです。


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ピーマンパパ

数年前、東京23区で経産婦の自殺調査をうけ、産後うつの抑制に乗り出すと聞いた。「メンタルケアの充実」となっていた様だが、その後どうなっただろう。https://www.utuutu.com/entry20.html
によると問診でチェックするとなっている。

産後うつの原因のひとつは、恐らくは産後の甲状腺の乱高下もあるんだろう。精神科と甲状腺科のバイパスは意外に細いようだ、断絶していると云っても良いかもしれない。

精神科のページをみていて、甲状腺の投薬で改善した例があった。
http://www.clnakamura.com/未分類/統合失調症と甲状腺/

これも、精神科医には蓄積がなく、患者の家族の自力調査がきっかけなようだった。専門家は専門だけやっていれば免責なんだろうが、実際に社会を改善するには、少しでも専門外とのバイパスを作ることが大きいのだろうと思います。
by ピーマンパパ (2020-04-07 00:27) 

ドイホー

本当その通りですね。自死対策ということになれば、専門家が自分の専門をいかにはみ出すかということがカギになると思うし、そのはみだしをまとめる行政なり、財団なり力のあるところがあれば話は早いのだろうと思いますが、なかなかですね。出産後の調査とそれに基づくフォローはされ始めているようです。一時的なものにならなければよいのですが。
by ドイホー (2020-04-09 12:45) 

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