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自治体職員対する分限処分が取り消される!人事委員会裁決。公務員の人事評価制度がパワハラの凶器になった事例。 [労務管理・労働環境]


これは、町という公的団体が、法律や倫理に反して一人の職員を分限処分を行い、職員を精神的に追い詰めたことに対して、県の人事委員会がこの処分を取り消して職員の名誉を回復した事案の記録です。

ある町の職員が、分限処分を受けました。
分限処分とは民間の懲戒処分のようなものです。
この時の分限処分は、
降格で、それに伴い給与などが減らされました。
経済的にも大打撃になりますが、
精神的にも大打撃になります。

分限処分の主な理由は、
2年連続最低の人事評価であり
上司の命令を守らないということでした。

まさか本当に分限処分が下されるとは思わなかった当該職員は
精神的にかなり病んだ状態になってしまいました。

それでも残った精神力を振り絞って
人事委員会に不服申し立て手続きを行い
そののちに私が代理人になりました。

少し調査をしただけでかなりおかしな分限処分だった
ということがわかりました。

弁解の機会が証拠上見当たらないという手続き的な問題
そもそも理由が明確ではないという実態的な問題
極めて深刻な問題がそれぞれありました。

1 弁解の機会がない
不利益処分をするのですから、弁解の機会を与えなければなりません。
正式に分限処分の対象となっているから弁明しろ
という機会は全くなかったのです。
一度だけ呼ばれて話をさせられたということはあるものの
そこで示された当該職員の落ち度は、当該職員がすべて論破したので
分限処分の理由とはされませんでした。
その代わりその時には話題にもならなかった理由が
分限処分通知の理由の欄に掲げられていました。
まさに不意打ちです。
ここは町の責任があります。

2 理由がない
色々と上司が対象職員の落ち度を言うのですが
一切の記録がないのです。
また、落ち度があったとすれば当然あるはずの
日常の注意指導もないのです。
「いつだったかは覚えていないけれど
 誰かがこんなことを言っていた。」」
というような理由でした。

きちんと日時と内容が記録されている理由は
会議で自分の意見を言ったり
説明を求めたりしたということに対してのものでした。
分限の理由にはならないことは明らかです。

<どうして町はこんなずさんな分限処分をしたのか>

分限処分は、年収も減りますし、身分も低くなります
経済的にも精神的にも大打撃を受けます。
町がどうして無理を通そうとしたのか
という疑問が当然起きてきます。

実はこの職場は、町役場ではなく
町が経営する事業体という職場の職員の話でした。
赤字続きの事業体を
その上司に力によって赤字を減らしていったという事実はありました。

そして職員が否定評価された発言も
上司が行った
時間外労働の無償提供の提案や
倫理的に問題がある仕事内容の指示に
反発したことでした。
しっかり記録が残っていて時間や行動内容が示された
職員の否定評価の対象はほとんどそういうものでした。

町は公的事業の赤字を減らしたいという思惑からと
赤字を減らした実績のある上司を忖度して
当該職員をやめさせようとしたということなのだと思います。

<2年連続の最低人事評価のからくり>

人事委員会の処分取消手続きの中で
上司の証人尋問のようなことがありました。

ちょうど別の公務員の人事評価を争う裁判をやっていて
けっこう公務員の人事評価制度に詳しくなっていたので、
制度に沿って質問をしたのですが
上司は基本的な仕組みさえ答えられませんでした。

人事評価制度そのものを全く知らなかったのです。
それで、気に食わない部下、目障りな部下の
一つの行為を理由に数か所の項目を最低にしたのでした。

そもそも期首目標を掲げるとか
自己評価をさせるということも知りませんでした。
それでも「自分は民間の事業体でも人事評価をしてきたベテランだ」
と胸を張って言っていました。

この上司も役場の出身ではなく
民間の事業体から役場の公的事業の管理のために抜擢された人で
そもそも公務員の人事評価制度を全く知らない人だったのです。

自由に、気分で、自分の感情のおもむくままに
自分の好き嫌いで最低評価をつけたのでした。

<町の責任>

町は、人事評価制度を説明する義務があります。
評価があまりにも極端である場合、
調整を命じる義務もあります。
ところが、町は人事評価を説明していませんでした。
「その上司を信頼するから二次評価はしなかった」
と明文で回答してきた始末で
二次評価や調整をする気持ちさえなかったことになります。

法律を守る意識がなかったということです。

この2年連続最低評価がされた責任を取るべきは
町自身なのです。

町自身が公務員の人事評価制度を理解していなかったのです。

それにも関わらず町は、分限懲戒委員会をつくりました。
同委員会では
当該職員の落ち度などは、裏付けがなく
上司の記憶や印象だけしかない
ということがはっきりと議事録に記載されていました。

それでも分限手続きを進めるため
最初に当該職員に弁明させて
そののちに他の関係者から事情を聴取して
分限理由を固めようなどという発言もありました。

町の懲戒委員は誰一人
「それはおかしい。不公平だ。」
と言いませんでした。
人一人の人生がかかっているというのに
その点をどう考えているのでしょうか。
大変恐ろしいことです。

誰一人、職員の人生をまじめに考えている人はいない
ということになります。
そういう人だけを委員に選任したと言わざるを得ません。
空気を読むということはこういうことなのだなと思います。

大事なことは、町であっても、
赤字を減らすことなどの一方の理由だけを重く見てしまうと
外の事を考えられなくなるようです。
町であっても
法律を守ろうとする気持ちすらなくなっていくようです。

そうだとすれば
この町だけでなく、
外の市町村や都道府県でも
同じような不合理な人事評価、
不合理な分限手続きや懲戒手続きが行われている可能性がある
ということになると思います。

自治体という公的な団体の評価、処分だから
争うことができないと思ってしまい
泣き寝入りする人もいるのかもしれません。

でも、不合理なことは不合理なのです。
不合理は正さなくてはなりません。
自分だけでなく、
同じことはこれからも繰り返されてしまいます。

当該職員も精神的にかなり落ち込み危険な状態でしたが
私と戦う中で回復しつつあります。
自分が信じた職場や町が
みんな自分に対して攻撃してきて
自分には誰も味方がいないと感じていたわけですから
それはかなり厳しい状況にあったものと推測できます。

色々な制約があるかもしれませんが、
その中でも頑張って
名誉と経済的不利益を回復した職員がいたということを
苦しんでいる人たちに報告したくてこれを書いています。

都道府県の人事委員会は第三者機関です。
かなり事情について詳しいし
きちんと筋を見て正しい判断をしてもらいました。
手続きの運用なども感心しました。
捨てたものではありません。

戦う手段は残されているのだと思いました。

それを実感できたことも
この事件に取り組んだ成果でした。


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