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過労死の前に見られる 体が動かなくなる地蔵病 慢性的な短時間睡眠の持続が原因ではないのだろうか [閑話休題]



<事例1>
その人は亡くなってはいないのですが、過重労働(長時間労働、上司との人間関係の不具合)とストレスの一番高まっているときに、突然立ったまま動けなくなったと言います。仁王立ちの状況で、口も動かせなかったようです。どのくらいこれが続いたかわからないのですが、家族が心配してスプーンでかゆ上のものを口の中に入れたけれど、口が動かせないので、だらだら零れ落ちてきたそうです。意識はあり、本人はこの状態を記憶しています。この人は、自分の状態を地蔵のようになったと言っています。その後救急車を呼び、救急隊員の方々にマネキン人形を運ぶように担がれて救急車内に入ったところ徐々に体が動くようになったとのことでした。
自分で体を動かせないという症状と、マネキン人形のように運ばれたということから一定の硬直があったのでしょう。

<事例2>
こちらも生存事案です。慢性的な過重労働で、数か月にわたり月120時間を超える時間外労働をしていました。発症直前2か月くらいは布団に入ってもよく眠れなくなっていたようです。
その人は朝起きて仕事に行こうとしたときに布団の上で異変が起きました。体がグラグラしだして文字通り倒れてしまったとのことです。その後、やはり体を動かすことができず、トイレに行くことができず失禁してしまったそうです。少しして家族に抱えられて自動車に載せられて病院に行ったとのことで、事例1よりは硬直や麻痺の程度は軽かったようです。記憶があります。グラグラしだしたという表現はその通りだと思いますが、その時すでに体が動かずバランスを調えようとすることもできなかったということのようです。もしかしたら硬直も起きていたのかもしれません。

<事例3>
数か月後に自死された事案です。道を歩いていて、突然倒れて動けなくなり救急車が呼ばれたようですが、やはり救急車の中で体が動くようになったようです。亡くなってしまった後に事件を担当していたので、本人から話を聞くことができません。この人も長時間労働の上に、数か月間休みを取っていませんでした。

各事例とも30代男性です。診断名は事例1は最終的にうつ病でしたが、発達障害、人格障害、統合失調症などの病名もつけられました。日本を代表する大学の病院で発症前の様子を調査しないで心理テストだけでその診断がなされたこともあるようで、医学の素人からすると少し奇異な感じを受けました。

事例2は双極性障害ないし統合失調症、事例3は妄想性障害の診断名が付いています。

この他に身体が硬直して動けなくなるという体験は重いうつ病の方からも報告を受けています。

睡眠時間の不足は、必ずしも労働していたために睡眠時間が削られたということだけでなく、その短時間睡眠が何か月か続いていくと、そもそも常時交感神経が高ぶっている興奮状態となり、横になっても眠ることができないということも関与しているようです。

事例1の方は元々大手企業の昭和の猛烈社員をほうふつさせるやり手の方で、現在は大手企業で働いていますが、そこまで回復するまでには数年以上かかりました。

事例2の方も元々幻覚幻想は無く、私がであってきた統合失調症の方とは全く違う状態ですが、向精神薬を飲んでも平気だということは、やはり何らかの精神的な問題を抱えているのかもしれません。現在も睡眠サイクルが破綻しており、就業をすることができません。

事例3の方は自死されました。

他の体が硬直することを教えてくださった方も10年以上を経てもうつ病は治癒していませんが、10年後に復職がかない、時々調子が悪くなって休むのですが、仕事は続いています。

闘病中の事例2の方の状態が一番詳しくわかるのですが、睡眠サイクルが破綻しているというのは、薬を飲まなければ眠られないようなのですが、眠る時は18時間くらい眠ってしまったり、朝起きられないなどの症状があり、規則正しい生活ができないようです。その他は、身体も鍛えているようで、はたから見たら健康体にしか見えません。一番の問題は客観的には睡眠障害です。

それぞれの共通点は、発症前2か月から数か月短時間睡眠が慢性的に継続していたということです。

必ずしも長時間労働のために睡眠時間が圧迫されるというわけではなく、事例2の方が典型的ですが、特に他にストレスが無いけれど、1日4時間程度の睡眠を、定まらない時間帯に取っているうちに(明け方から昼くらいとか、深夜から数時間とか)、布団に入っても寝付けなくなってしまい、眠っても深い眠りを得られず、中途で目覚めてしまうという状態になったようです。このため、1日あたり1,2時間程度の極端な睡眠不足が継続していたことになります。

この他にも、上司とのやり取りが葛藤を高めて、布団に入っても昼間の悔しい気持ちや怖い気持ちがよみがえってきて眠りにつくことができず、やはり1日2,3時間あるいはもっと短い睡眠状態が続いた人もいました。
さらに別の方は職場のストレス以外に、家庭生活でストレスを抱えていて、いずれにしてもゆっくり眠ることができず短時間睡眠が続いていたという事情がありました。

共通することは、脳が眠る体制になっていない状態だったということだと思います。

そのような人間の生理に反する睡眠状態が続いたため、ますます眠る体制を作ることができなくなったのでしょう。それでも生理的には睡眠を要求するというか、眠ろうとしていたのだと思います。いよいよその矛盾が大きくなり、覚醒はしているのですが、脳の一部が眠ってしまったために体が動かなくなったということは考えられないでしょうか。

一種の金縛りの状態です。金縛りは睡眠から覚醒する際に体が動かなくなる状態ですが、不完全ながら意識もあります。逆に覚醒した後に脳が眠り込むことによって、身体が動かなくなるという状態が地蔵状態なのではないかと思っています。つまり、睡眠不足が続くとレム睡眠の状態が早く始まる傾向になるとしたら、その睡眠不足が極端に慢性化した場合、覚醒した後でレム睡眠の一部が始まってしまい、脳から運動神経への神経回路が遮断してしまうという状態になってしまうのではないかという、いわば妄想的な話なのです。この不完全なレム睡眠状態というのは、逆に意識が無く運動をしてしまうレム睡眠症候群というのがあるわけですが、その逆の状態ということになると思うのですが、どんなもんでしょうか。それにしても、身体が硬直する場合は倒れてしまうことが多いか、横たわっているときに硬直することが報告されているのですが、仁王立ちで立ち続けていることができたメカニズムはよくわからないところであります。

いずれにしても、地蔵状態が起きると、その要因を放置すると死に至る可能性があるということは言わなければならないと思います。特に睡眠不足についての研究の益々の発展を願ってやまない次第です。
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