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理想のリーダーの要素、理想の人間関係の要素 THE ANGERME竹内朱莉論 彼女は何故上司にしたいと言われるのかについての考察 [労務管理・労働環境]


カテゴリーは労務管理にしましたが、家事のカテゴリーでもよいような内容です。

アンジェルムという10人編成の実力派アイドルグループがあります。モーニング娘。の所属するハーロープロジェクトのグループです。グループとしてはテレビにはあまり出てこないのですが、ライブ活動はなかなかチケットが取れないほど人気で、タレントや歌手、モデル等としてそれぞれ単体でも活動しているようです。

このブログでどうしてこのアイドルグループを取り上げるのか、その理由から説明する必要がありそうです。このグループは、もうすぐ卒業する竹内朱莉(あかり)さんが現在リーダーを務めています。この人が同業者のタレントや一般のファンから「理想の上司」として支持されているようなのです。私が寝る間だけ惜しんで調べてみたところ、かなりの収穫があったので、ご報告をする次第です。

このグループは、歌唱もダンスも定評があるのですが、そのスキルの方向性がバラバラなのです。あえて寄せようとしていないのかもしれませんが、一人一人のパフォーマンスをみると、どうして一つのグループとしてまとまるのか不思議なくらいです。

それなのに、ライブ会場では奇妙な統一感というか、一つの有機体という一体感を感じるパフォーマンスになっています。何よりも、若いメンバーがライブ会場で、十分に実力を発揮しているところに業界やファンからの賞賛がなされているようです。

一言で言うと、全員が「堂々としている」ということがこのグループの魅力だと私は感じました。

組織としての力が発揮されているということです。会社などでは逆に、一人一人の能力は高いのに、集団行動になると微妙な人間関係から全体の力が期待値よりも下がってしまうということに気が付いて悩んでいる方もいらっしゃると思います。人を育てるときには、一人一人の能力を高めた上で、集団で行動することによって、総和の力がそれ以上の効果を発揮することが理想です。しかし、なかなかうまくゆきません。そうだとすれば、リーダー論という視点で、若い女性グループからその秘訣を学ぼうというのが今回の企画なのです。

もちろんリーダーだけでなく運営スタッフのご努力や確かな方向性に負うところが大きいと思うのですが、リーダーの分野に着目してわかりやすく見て行こうと思います。

私が竹内さんから見出した集団の力を発揮するリーダーの要素は以下のことです。

1 圧倒的なスキルの高さ

竹内さんは、20代半ばですが、芸歴は15年くらいあるようです。その中で歌やダンス、あとはマイクパフォーマンスも磨いてきたようです。スキルが一定のレベルでとどまらず、常に向上していったわけです。リーダーに限らずこのグループの人たちは不断の努力の跡が見られます。天性のものに満足しない努力、研鑽がなされていることがわかります。竹内さんは、その中でも長期にわたって努力を続けてきて、他者からも評価されるスキルを身に着けているということが一番の武器だと思います。実績というのが単に過去の栄光ではなく、成長し続けた実績だということが仲間内からも評価されているのでしょう。同じグループの特に若手メンバーは、竹内さんと同じグループである以上そのレベルまで自分を持って行かなければならないと考えることで、全体の底上げも行われるようです。

2 スキルに裏付けされた絶対的な自信

自分のスキルの高さが良い意味で自信になっています。この人は後輩たちからいじられるキャラです。どんなにいじられても自分の立場が不安になることは無いようです。自分のスキルの高さの自信があるので、後輩たちに好きにやらせていてもびくともしないメンタルの体幹の強さがあるみたいです。

実際の職場では、仕事の内容は次々変わります。上司と部下が同じ仕事をする必要が無い場合もあります。それだけ楽なのかもしれませんが、どうしても同じ評価基準で競うようなことが出てくると、絶対的自信が無い上司は辛いかもしれません。パワハラの背景には、上司の部下に対する嫉妬が色濃くある場合があります。

3 部下の成長を自分のことのように喜ぶ。「私たち」の視点

コンサートなどが行われると、感想や評価がされるのが常です。最近の評価として、若手メンバーの台頭への賞賛が寄せられることが多いようです。これを竹内さんは、自分のことのように喜ぶようです。同業者からは、この点が支持されているようです。芸能界に限らず、仕事には不安がつきものです。自分はうまくやれただろうかということを気にすることができる人が伸びていくのかもしれません。良いところを良いといって、自分のことのように喜ぶと、メンバーは自分の努力の方向性がこれでよいのだという安心感を抱くということかもしれません。

自分の良いところを他の人間が喜んでくれるという体験は、自分はグループの一員だという意識を強く持つようになるのでしょう。メンバーは自分の個性や実力をのびのびと伸ばそうとするようになります。また、自分の成功を他のメンバーに堂々と報告することができるようになります。自分の成功をメンバーの誰かが嫉妬すれば、報告を遠慮してしまいます。難癖をつけられるとどうすればよいかわからなくなってしまいます。

この評価の過程で無駄に全員を同じ枠にはめるのではなく、各人の個性が尊重されての高評価ということになれば、上司が想定する以上の成長が起こることがありそうです。

1+1が2よりも大きくなるのはこういう組織です。現代の労務管理において、見習うべき要素の一つがここにあります。

4 弱い者をかばう

年頃のメンバー間の対抗心を背景として、悪意はないにしても、例えば年上の者が年下の者をからかうことがあります。年下だけど世間からは評価されている仲間に対する対抗心はどうしても出てくるところだと思います。努力だけで評価されるわけではないので、持って生まれたものの違いで有利不利ということがあります。芸能界は特にそれが強いと思いますが、一般の社会でも多かれ少なかれあると思います。

年下のメンバーに隙があって、つい年上のメンバーがいわゆる突っ込みを入れてしまい、弱い立場の者が困惑するということがありました。こういう時、リーダーはえこひいきになることを恐れずにかばう必要があります。竹内さんが間髪入れずにかばった姿にとても感心しました。

さらに感心したポイントは、突っ込んだ方に対しても十分な配慮ができるということです。つまり、突っ込んだ方も「しまった」と思うのですが、勢い余って引っ込められないわけです。そのことを飲み込んでいるように、突込みに対して新たな突込み(突っ込み返し)の形にしてやめるように促し、最初に突っ込んだ先輩が「ごめんごめん」と言いやすくしているのです。これは彼女がリーダーになる前、10代の時から自然に反射的にできていたようです。白黒はつけるしかし制裁はしない。これだけでもかばわれた方はとてもありがたいことです。からかった方も気づまりにならずに、その一瞬で完結することができます。これはすごいなあとただただ感心しました。

誰かをかばうことが誰かを攻撃することだという公的支援の関与者は見習ってぜひ考えを改めてほしいと思います。

職場が原因のうつが発生する場面では、必ずしも大きく衝撃的な出来事があるわけではありません。労働災害認定にはなりにくいのですが、このような小さな微妙な嫌がらせが蓄積していって、最終的に心理的圧迫を受けるということがむしろ多いのではないでしょうか。現実の会社の中には、些細なことだという言い訳をしてこのようなマイクロアグレッションを放置する管理職が多くいます。おそらく注意したことによる自分への反発が怖いのでしょう。

竹内さんは、反発を恐れないことと、言っても反発をされないだろうというメンバーに対する信頼と、相手に対する配慮ができる方法をもっているという能力があったので、反射的に注意をすることができたということになります。これはすぐに使えるスキルです。大いに見習いましょう。

学校でも教師と生徒の関係でもいえることです。小さな攻撃はこまめに排除するということ、やめるべき行為はやめるべきだという評価を権威者がきちんと行う、こうやって人間関係の秩序は生まれて生徒は安心して学校に来ることができるわけです。自分に自信のない教師が増えているのであれば何らかの対策を立てることが急務だと思います。

5 きちんとダメ出しをする、失敗を長びかせないで止める、具体的な改善ポイントを示す

また、感心したのは、彼女は後輩にきちんとダメ出しをすることです。だらだらと発言を続けていた後輩に対して、仕事でやる時はだらだらしてはだめだときちんと否定評価を明確に示していました。さらに、何がだめなのかということを具体的に述べて、どうすればよかったのか、ここではこれだけにとどめていて、次のターンでこういうことを話すならばメリハリがきくだろうということを言っているのです。

つまり、1)どこが悪いのか、2)どうして悪いのか、3)どうすればよいのかということを極めて具体的に指摘できるのです。後輩の方は一杯いっぱいになっていますので、うまくいっていないことがわかっているものの、どうすればよいのかということにたどり着けません。こういう時は、このようにストップをかけた上で具体的に言って聞かせて覚えれば済むことなのです。

竹内さんからその時言われた後輩は実際のところどのように感じたのかわからないところはありますが、具体的な指摘と改善ポイントなので、素直に従うことができるということになります。

言い方も配慮されています。表情が穏やかなのだと思います。文字起こしだけを見ると、厳しいダメ出しなのですが、独特の甘い声を有利に活かして、あまりきつい印象が生まれません。これは天性のものだと思います。第三者が聞いても、言われている後輩に「頑張れよ」と言いたくなるような、暖かい気持ちで聞くことができます。

現実の労働現場とはずいぶん違うようです。むしろこのようなきちんとしたダメ出しを目撃したから、ファンの方たちは理想の上司だと強く感じるのではないでしょうか。

現実の労働現場では、ダメ出しはするけれど具体的な指導ができない上司が実に多いです。パワハラの大半は、具体的な指導ができないために、的外れの精神論とか、過去の出来事をほじくり返した嫌味を延々と繰り返すという形態が多いようです。これではメリットはありません。部下は成長するどころか、うつになっていくだけです。

上司はきちんと注意できない自分に対するいら立ちと、背景としての嫉妬心が加わり、無意味な注意をすればするほど攻撃的感情が強くなっていくようです。きちんと指導できていないという自覚もあって、無駄に時間ばかりが長くなるようです。また、言われている部下から馬鹿にされていないかという不安も出てくるようで、相手により大きなダメージを与えることばかりが目標になってしまうようです。

6 平等取り扱い

後輩を平等に取り扱うということができるのもすごいかもしれません。単に等距離を置いて付き合うということではないことがわかります。スキルのあるメンバーに対しては、スキルに対して敬意を払うということを当たり前のようにできるということだと思います。但し、付き合いの長いメンバーやエースを特別扱いしないということも、人間ですから実際は意識しないとできないと思います。メンバー一人一人からは、自分は決して独りぼっちにさせられないという安心感を抱く高いポイントだと思います。

7 ポジティブ感情を率先表出

案外リーダーに大事なことはここかもしれません。いつも口を開けば嫌なことしか言わないリーダーだとやっぱり息苦しくなると思います。心配が勝ってしまって、ついそういう発言をしてしまう人もいるわけです。

もしかしたらこれこそ天性のものかもしれませんが、竹内さんは楽屋などでもとにかく明るくてにぎやかだそうです。もっとも、常にそのような精神状態でいたわけではないようで、苦しいときもあったようです。心無い人たちの言動から、パワハラの被害を受けた労働者が陥る状態と同じ症状にもなった時期もあったそうです。でも近しい人たちもそれを知らなかったというのです。

意識してポジティブな感情を表現しているという側面もあるのだろうと思います。もっとも、メンバーが自分をリーダーとして尊重してくれていると実感すると、その中にいること自体がとても楽しい充実感を感じるという相互作用もあるかもしれません。

ポジティブなリーダーの元では、メンバーもつられてポジティブになっていくのが人間の心理です。「明るくなれ、積極的になれ」という結果を押し付けることより、リーダーが全体の雰囲気を良くして、部下が積極的に仕事に取り組む効果を誘導するということが一番現実的なのかもしれません。

8 仕事以外の充実

仕事以外の充実も魅力を形作っているようです。悩みを打ち明けられる一般の友達が多いようです。職場の外に味方を作ることは大切です。また、書道は正師範の資格があるとのことです。小学校のころから芸能の修業を始めていますから、芸能活動の傍らコツコツと書道も継続していったということになります。この継続する力はすごい。

この仕事以外の充実ということはとても大切なことです。何かに打ち込むことは自分の状態を感じ取ることができるようになります。一本調子で選択肢が無くなることを防ぐことができるので、致命的な選択ミスを避けることができます。また、仕事しかない人生の場合は、仕事や職場の人間に対して過度な期待をしてしまったり、仕事以外の日常を捨ててしまって人生の目標が失われてしまうという危険も生まれます。同僚にも圧迫感を与えてしまいがちです。

つまり仕事以外のことにも打ち込むことで、心の余裕が生まれるということですね。これは一緒にいて安心を感じることでしょう。

<良いリーダーがいる人間関係>
 
良いリーダーの人間関係に対する影響は、一人一人のメンバーに安心感が生まれるということです。自分のパフォーマンスを何の躊躇もなく発揮しきれることにつながるようです。特に若手メンバーは、一人で歌うよりも全体の中で歌う時の方が圧倒的に優れたパフォーマンスを見せています。チームにいることに安心を感じ、チームの一員だということに安心感をもっているからだと思うのです。それが冒頭に述べた、「堂々とした」姿とそれに伴う圧倒的なパフォーマンスとなって結実しているのだと思います。

若者たちにとっても嫌みのない堂々ぶりと映っているのではないでしょうか。それが見ていて楽しいという印象になり、ファンの人たちが言うところの元気になるということなのではないかと思うのです。

アンジュルムの比較的新しい楽曲に『Piece of Peace~しあわせのパズル~』という楽曲があります。YouTubeで公式のミュージックビデオを見ることができるのですが、この記事で述べたメンバーたちの安心感が見事に映し出されています。日本の芸能界でこのようなMVが制作できるのは、奇跡のようなものを感じます。歌詞も対人関係学そのままのような素晴らしい価値観が示されています。派手な楽曲ではありませんが、名作だと思います。

若者たちが堂々としていること、若者たちが頑張っていることを見聞きし、尊敬できる若者たちから教えを受けることは実に楽しいことです。こう考えると年を取るということは捨てたものでもないように感じてきます。

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