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続報です。症状固定時期が争点となった事件における宮城県支部審査会の決定(主治医を尊重で不支給を取り消し) [労災事件]


症状固定時期を主治医の判断よりも前に
ずらされるということは少なくありません。
交通事故の損害賠償も労働災害でも
同じようなことがおきますが、
地方公務員災害補償の場合、
私が担当してきた中でも何件かありました。

みんな、症状固定時期を前にずらすのです。
症状固定時期については、つたない説明図ですが
こちらをご覧ください

症状固定の説明.jpg

左端から時間が慣れるのですが、
普通の健康状態で生活していたところ、
事故にあって負傷したために、
健康状態は落ち込み、もともとの健康状態と開きができます。

治療を続けることによって、健康状態は
元々の状態に近づくわけです。

あるケースでは、もともとの健康状態まで回復するとすると
それは、日常用語の治癒と同じになります。
そうすると、それまで生じた損害(灰色の点々のエリア)が確定し
損害賠償額が決まります。

しかし、ケースによっては、
元々の健康状態まで戻らない場合もあります。
上の図の場合ですね。

そうすると、治療は続けることになります。
すると困ったことが起きます。
いつまでたっても損害が確定しなくて、
損害賠償の金額が決まらないのです。

被害者は治療費は払ってもらえるものの、
慰謝料の金額は、どのくらい通院したかで決まるので、
そちらは決まらない以上もらえないということになります。

そこで、ある程度症状が落ち着き、
このままの状態が変わらないだろうという時期の健康状態を
症状固定としてしまうわけです。

この通り、症状固定は賠償実務の概念なので
医学的な概念ではありません。
どこで症状が落ち着いたかなんてことも、
実際はよくなったり悪くなったりするのですから、
えいやっと決めるしかありません。

ただ、治療を受けてよくなっている段階で
症状固定にしてしまうのもおかしいので、
医学的な判断が必要だということになります。
だから医学的な概念ではないのですけれど、
医学的な判断が必要だということになります。

そうして
症状固定時の状態が一生続くということにしますので、
症状固定時の障害の程度に合わせて、
その状態が平均寿命まで続くと仮定して
損害賠償額が定められることになります。

中には、本人が元々の健康状態に回復していないと感じていても
生活上の不便さがなければ
障害と認められず、固定の時期で
すっかり回復したと判断されてしまうこともあります。
後遺症なしというやつです。

話を単純にしますと、
この後遺症なしが見込まれるケースですと、
症状固定の時期を早めることによって、
灰色のぶつぶつの期間が短くなりますから
賠償金も少なくなります。

賠償金を払う方は、
できるだけ症状固定の時期を早めることによって、
支払額も低くなるわけです。

交通事故については最近書きましたので省略します。
地方公務員について述べます。

今回のケースは、まさにこのようなケースです。
主治医は症状固定は、事故から1年4か月後だと診断しました。
ところが、地方公務員の労災保険は、
事故から8カ月足らずで症状固定だと認定してきたのです。

理由についてはひとつ前の記事の通りです。

これに対して地方公務員災害補償基金宮城県審査会は、
主治医の判断を尊重することと決定したのでした。

症状固定の判断についての見解は以下の通りです。

主治医の判断と異なる判断をする可能性を
一般論としては認めながらも
「治療効果が期待できるか否かについての判断要素となる
患者の身体の状況・治療の経過・症状の推移などについて
最も多くの情報を有しているのは
実際に治療にあたってきた主治医である。
したがって、主治医が治療の継続を必要であると診断している場合には、
その診断が医学的根拠を欠くなど不合理と考えられる場合を除き、
原則として尊重されるべきである。」
というものでした。

極めて良識的な判断と言えましょう。

そうして、
実際に8か月後から1年4か月後まで
症状の改善がみられていることを認定して、
主治医の意見に従うことを決定したのでした。

最初の決定がおかしいのは、
症状固定からさらに3か月後の決定だということです。
症状が改善していることを
少し調べればわかることなのに、
主治医の意見を無視してあえてさかのぼらせたのです。

主治医は、症状固定や障害等級に精通されている先生で、
それをあえて否定しているのですから、
主治医の先生にも失礼な話です。

ブログを発表して間もないのに、
日本各地から問い合わせをいただいています。
私もこのケースではないケースで理不尽な思いをしたこともあります。

なかなか支部審査会は逆転認定をしてきていません。
(宮城県はだいぶ改善されました。)
健全な是正機関、システムとして機能していない例も
多々見られます。
しかし、実際に支部審査会での逆転認定もあります。
各地で理不尽な思いをされている方々に、
ぜひ情報を提供させていただきたいと思い、
続報を書きました。


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