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職場は放っておくとどんどん殺伐になるという法則。「昔はもっと厳しかったのに」という錯覚が起きる理由 [労務管理・労働環境]




働き方改革で、労務管理の仕事の重要性がましてきました。
実務的には同一労働同一賃金の対応で大変な思いをされていると思います。
パワハラ対策ということも決め手が見つからず
「パワハラするな」と命令することが実際の対策になってしまっています。

なぜ放っておくと、部下に厳しく当たってしまうのだろうと
頭を抱えている担当者の方も多いと思います。
まさか自分の会社でパワハラが起きてしまうなんて思いもよらない
という人事担当者が多いと思います。

そこでパワハラをしているという噂のベテラン社員に聞いてみるわけです。
「最近は、あんまり厳しすぎる指導は、問題になるよ。」
するとベテラン社員は答えるでしょう。
「なに、私の若い時は、もっと厳しく言われましたけれど、
誰もやめたりしませんでしたよ。
これでだめならものになりませんので、大丈夫です。」

これには理由があります。

1 聞き手が効く状況の違い

先ず、ヒトによってダメージの受け方が違う
という批判はもっともオーソドックスの批判です。

これは、育ってきた環境の違い、
もともと持っている感受性の違いももちろんですが、
フォロー体制の整備の違いがあります。

ベテラン社員の新入社員当時は年功序列賃金の体系ですから
上司ににらまれたところで
出世はできなかったかもしれませんが
定年まで会社にいることはできました。
それなりに賃金は上がりました。

上司から叱責された若手従業員に対して
上司からすれば余計なフォローをしていた人たちがいたわけです。

飲みに連れて行って慰めてくれたり、
こっそり仕事を手伝ってくれたりしたわけです。
上司からの叱責のダメージに対しては
同僚からフォローされることが一番のいやしになるようです。

ところが、最近は、上司からにらまれると
出世ができないどころか、
リストラとか派遣切りとか更新拒否とかいろいろあって
そのことをおそれるあまり
事後的なフォローすらしなくなるという風潮があるようです。
叱責を受けた若手従業員は
会社の中で孤立することが多くなったようです。

過労自死は、こういう現場
つまり、上司の過剰な叱責があっても
誰もフォローする者がいない職場で多く起きています。

ベテラン社員が上司から同じことを言われて耐えられたのは
こういうダメージ軽減策があったからかもしれませんので、
単純に同じことを言ってしまうと
ダメージが軽減されない現代の職場では大変なことになってしまいます。

2 上司の勘違い、場面違い

また、同じような場面で同じような言葉を使ったというつもりでも、
実際は場面がまるっきり違う場合があります。

例えば、部下が職務上の質問をしてきたときに
「なんでもこっちに聞くな。自分で考えろ」
ということを言うことがあります。
新人従業員に対するパワハラで多く聞かれる叱責です。

おそらく、それを言った上司も、かつて、
自分の上司から同じ言葉を言われたのだろうということは予想がつきます。
でも、本当に同じ場面かというと、少し怪しいことが多いようです。
自分が言われたときは、極端な例を挙げると
上司が丁寧に説明して一度それをやることができたのに
ちょっとだけ応用して考える要素が出ただけで、
上司の指導を仰いだというケースがあるようです。

それにもかかわらず、自分が言われた言葉を後輩に使いたくて
(昔の指導に対する腹いせとか、上司ぶってみたいとか)
ほとんど説明していないにもかかわらず、
また、何の経験もない新人に対して
自分で考えろという無茶なことを言っている場合が
どうやら多いようです。

昔は「ああ無茶言っているな」とかわいそうに思って
先輩がやり方をこっそり教えてくれる
というようなことがあったのかもしれません。
それで、上司が若手のころ何とかしのげたのかもしれません。

だいたいがパワハラをするような上司は
上に媚びることは上手な人が多くて
何人かの自分の上司の温情で今の立場に引き上げてもらった人が多いように
訴訟などの事件を通じてみてそう思います。
当のパワハラ上司は、そういうことは忘れているようです。

場面が違って考える材料がそもそも与えられていない
またフォローすると自分がにらまれるのでフォローしないという職場では、
自分で考えろ
と言われた方は不可能を強いられているわけですから途方に暮れてしまいます。

3 発言者と聞き手のダメージの度合いの違い

叱る人が自分の叱責で相手に与えるダメージとして想定される大きさと
それを聞いた人が受ける実際のダメージは
聞く方のダメージが大きいのです。

これは、自分でくすぐってもくすぐったくない原理で説明できます。
自分でくすぐってもくすぐったくない理由は、
くすぐる直前に、どの指でどの程度の力で、指をどう動かすかということが
無意識に、あるいは意識的に想定してしまうからなのだそうです。
くすぐったいというのは、意外性が無ければ感じない感覚なのでしょうね。

これと同じように、発言者の方は、
これから自分が何を言おうとしているのか、
口に出す直前に認識しています。
感情的になっていたとしても、
ある程度は、これから話す内容を知っているわけです。

どのくらい懲らしめてやろうとか考えているわけですが、
真意が別にあることも自覚しているわけですから、
それほどひどい結果を考えていないことも
話す方はわかっているわけです。

例えば「死ね」と言ったって、
本当に命を奪うというつもりで言っているのではないので、
それ程強烈な言葉を言ったという自覚はありません。
自分の内心と照らし合わせて、
それほどダメージはないと思っているわけです。

例えば「役立たずの給料泥棒」という場合も同じです。
泥棒の犯人として警察に告訴するわけでもないですし、
給料を返せというつもりもないのです。
だから、言っている方は、
「もっと結果を出せるよう頑張らないと自分は相手をしないよ」
という程度の(それでも十分強烈ですが)気持で言っているようです。

ところが、言われている方は相手の内心などわかりません。
「死ね。」と言われれば、
まさか命を取られるということはないだろうと思っても、
自分という存在をその上司の前から消すようにと言われているように感じます。

「役立たずの給料泥棒」と言われれば
給料をもらう資格がないと言われていると感じるわけです。

会社に来るなと言われているように感じるのです。

そうしてそれを他の同僚が黙って聞いているならば、
他の同僚からも同じ意見を持たれているというように受け止めてしまいます。

言われている方は、言っている方が想定するダメージより
はるかに大きなダメージを受けることが「通常」なのです。

4 叱責は代を重ねるごとに大きくエスカレートしていく

同じ言葉を、同じ場面で行ったとしても
ダメージは大きくなっていくという理由があります。

ポイントは話す方が想定しているより、聞く方のダメージが大きい
というところにあります。

わかりやすく数値を使って説明しましょう。

上司が元上司と同じ言葉で叱責した場合、
元上司は、20ポイントくらいのダメージを想定して叱責すると
その叱責を受ける方はもっと大きなダメージを受けるので
若かりし頃の上司は40ポイントのダメージを受けたとします。

歳とった上司が、元上司の同じ叱責をしようとすると、
自分が受けたダメージと同程度ならばよいだろうと思うとすると
40ポイントのダメージを部下に与えようとしてしまいます。

聞いている方は言う方の想定より大きなダメージを受けますから
例えば80ポイントのダメージを受けてしまうことになるわけです。

上司のまねをして「同程度」の叱責をすることが
何世代かにわたってしまうと
かなり激しいパワーハラスメントが行われてしまうことになります。
それでも、
「自分だって同じことを言われたのだから
それでダメージを受けてしまう今どきの若者は弱くなったなあ」
とのんきなことを言っているわけです。

5 小まとめ

自分が受けた叱責と同じ叱責をしようとすると
同じシチュエーションだとしても
部下は自分以上に大きなダメージを受けている。

ところがこれに加えて
自分が上司から指摘された場面が違うとか
それを聞く側の条件が違うとか
同僚のフォローがなくなったという事情が加われば
深刻なダメージを受けている可能性があるわけです。

簡単に言えば
普通に叱責すれば、ダメージは想定以上に大きくなる
これが真理なのです。

「普通に叱責」させることをやめさせなければ
精神破綻をする従業員が増えていき、
殺伐とした職場の雰囲気になるし、
過労自死が増えていくことになるでしょう。

生産性が上がるわけがありません。

6 どうすればよいか

先ず、一度叱責をやめさせることが必要です。
乱暴な言葉、配慮を欠く言葉、厳しい言葉をやめさせることです。

これを何年かに一度徹底しなければなりません。
放っておくと自然と受けるダメージはエスカレートするのですから。

止めろと言ってやめることはないでしょう。
何が悪いのか、通常の場合は上司も分からないからです。
何しろ、自分が受けたことと同じだという意識ですから。

失敗、不十分点、弱点、欠点を
責めない、批判しない、笑わない
という意識が有効です。

これをきちんとしたコーチング技術に置き換えることです。
これを経営者が直近の部下に対して手本を示す
ということから始めなければなりません。

失敗に対しては対人関係学は
PMGという手法で成長の好機として活用することを提唱しています。

弱点などの属性を改善するための方策を一緒に考えるということも良いですし、
チームプレイとしてフォローをし合う体制を作るということも有効でしょう。

何よりも、現状のメンバーで、チーム力を発揮して生産性を上げる
という明確な目標に近づけるための方策にしなければなりません。

できない人にできるようになってやれという指導が
実際は良く行われていますが、
色々な意味で時間の無駄です。
日本経済を落ち込ませる典型的な無能の労務管理です。

あなたが会社で労務管理を担当する立場にあるならば
是非、新人従業員から指導内容について具体的に話を聞くという方法で
上司の力を点検することをお勧めします。

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