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子どもの学費を支払わないと言ってしまう夫の心理 攻撃的感情によって客観的にわが子と対立してしまう原理 環境が人の心や認知をゆがめるという科学的把握の勧め [家事]


何人かと話していて、「あれ?変だな。」と思うことがありますよね。違和感をはっきり自覚するまで意識しなかったり、話している相手の属性かもしれないと思って深く考えなかったりするのですが、別の人から続けざまに話を聞くともしかしてと思うことがあります。

妻に子どもを連れて、突然別居されて、一人自宅に残された夫と話していて、感じたことです。

養育費を決めるときに、その養育費は、通常の生活を送っていることが念頭に置かれた養育費なので、イレギュラーなことで出費がかさむ場合に備えて、調停条項では、事故などで入院をするとか、高額の入学金が必要になった場合等は、「改めて協議を行う。」という文言を入れることがあり、むしろ多いかもしれません。
それに抵抗を示す夫がいるのです。現実にも、別居後子どもが私立の学校に入り、入学金の支払いが困難なのに、支払いの分担をすることを拒否するような事例もありました。

但し、実際に婚姻費用を払い、住宅ローンを払うととてもたくわえを作れないということも少なくないし、無謀な入学をする場合もあり、一律にそれを非難できるかというと難しいことはあるのです。

それでも金銭的に余裕があり、子どもを養育する意欲が高い場合であっても、子どもを連れて出ていかれた妻に対する感情が強くなってしまい、子どもが困ってしまうにもかかわらずに拒否するという事例があります。多くの事例では夫は自ら支払うことを望んで支払うのですが、拒否をするケースもあります。

そういう時は、やや強めに支払いをアドバイスするのですが、お金を出すのは私ではないので、どこまでいうべきか迷うときもないわけではありません。しかし、それまでに十分打ち合わせをして、この人は払うべきだと感じたときは、かなり強めにメリットデメリットを提示して、支払いを促すがほとんどです。

なんでそんな余計なことを弁護士がするのでしょうか。それは依頼者である子どもを連れされた夫が後々不利益を受けることが目に見えているからです。すべてのケースで一律に行うわけではなく、夫は本当は子どもの役に立ちたいと思っていると確信できる場合です。つまり、夫が子どもを大事に思っていて、子どもの発育に関与したいと思っている場合です。まあ、圧倒的多数の場合なのです。

実際は、そういう私が払うべきだと感じた事例では、本当にお金のない事例以外は、支払いは行われます。方法はそれほど難しくありません。

第1に、夫が拒否することで終わりにしないで、しっかりと議論の対象にすること。
第2に、学費の支払いを拒否することで、子どもが進学を断念することになるというデメリットがあることをしっかり告げること。
第3に、子どもが進学を断念したら、子どもは父親から愛情を受けていないと感じることになるという見通しを告げること。

概ね以上です。
これだけで、かたくなに拒否していた夫は、支払いに応じるようになります(私のケースでは)。

つまり、夫は、なんとなく、妻の口座に送金することに対して強い抵抗があるわけです。そしてその妻に対しての恨み、攻撃感情が強すぎて、子どもが不利益を受けるということまで、しっかりと考えることができない状態になっているようなのです。その結果、子どもが夫に対してどのような感情を抱くかなんてことまでとても考えることができないようなのです。

このことにはっきりと気が付くことはなかなか難しいことです。おそらく多くのこじれる事案では、夫側の代理人が、「ああ、こういう子どものことをかえりみないで、自分の不利益を少なくすることに必死な人なんだ。だから妻は出ていったのかもしれない。」などと思っているのかもしれません。

私は、人間的におかしい人ではないので、話せばわかるだろうというくらいの気持ちでいつも説得していました。しかし、子どものイレギュラーの出費に抵抗をする人が連続して現れ、それらの人がかなり尊敬できる行動パターン、思考パターンをしているのに、なぜか出費を拒否したということを目の当たりにして、少し考えてみました。

結局支払いに転じるのは、先に挙げた3つのパターンですが、特に「不利益を受けるのは子どもだ。」ということが頭に入れば、「あっ!」という声を上げることに気が付いたのです。そして、「もしや」と思い、次の同じパターンを示した夫に対して、「子どもを連れ去られた夫は、皆さん多かれ少なかれ、妻の口座に送金するというポイントに反応してしまい、お子さんの利益を忘れてしまうことがあるようです。」と説明したら、とても腑に落ちた様子で、早々と支払い条項を定めることに積極的に転じられたということがありました。

ここで、夫の代理人が、「子どもの利益を考えられないなんて、それはおかしい。支払わないなんて言うことがあなたできるのか。」などというネガティブな評価を依頼者にしたら、おそらく、気づくことがなく、妻に対する対抗意識で拒否し続けるのかもしれません。

本当に子どもが損をするということに気が付かないようです。

「お前の学費は払わないけれど、面会交流で楽しく振舞え。」と言っているに等しいことに気が付かないようです。私たちが気が付くのは、第三者だからなのでしょう。でも第三者でも、依頼者の妻に敵対的意識を持ちすぎてしまうと気が付かなくなるかもしれません。第三者の代理人のアドバンテージがなくなってしまいます。それだけ人間の被害感情は人の認知をゆがませるということだと代理人は肝に銘じるべきです。

元々がそういう性格なのではなく、連れ去り別居という行為によって、人の心が強い影響を受けてしまい、敵対感情が最優先となってしまい、それ以外の考えるべきことが考えられなくなってしまうというメカニズムをよく理解することも大切だと思いました。



逆もまた真なりですから。


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