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その雇止めは無効ですよ。有期雇用の18年問題。念書は書かない、書かせない。 [労務管理・労働環境]

ちょっと、学習会でお話しするため、
例によって、何を話すのか準備のための記事です。

1 有期雇用労働者の始まり

今問題になっている有期雇用労働者は、
正社員と同じ仕事をしているのに、
毎回契約更新を拒否(雇止め)されるのではないかと怯え、
賃金も低く、昇給も賞与もない、あるいはないに等しい
そういう人たちのことです。

こういう形態を意識的に始めたのは
高度経済成長期ですから、
いまから40年以上前のことです。
好景気でイケイケどんどんの量産体制に入り、
企業が労働者をどんどん雇わなければなりませんでした。

ところが、企業の方も、
このままこの景気が続くわけはないという観点から
本当に採用を拡大し続けても良いのだろうか
という不安を抱きました。

それというのも、ちょうどそのころまでに
裁判例で、
労働者を自由に解雇できないという法理が確立し、
ひとたび雇うと定年まで雇い続けなければならない
という覚悟が必要になっていました。

採用して生産を拡大したいけれど、
景気が悪くなったら人余りで労務倒産になる
という危機感から新しい雇用形態が生まれました。

それが、有期雇用労働者と
当時は職業安定法違反の派遣労働でした。

その中の有期雇用労働者とは
もともと3カ月から1年の労働契約と決めて
契約期間が満了したので終了するのであって
解雇ではないという論法が通用したのです。

なぜ、1年以下かというと
当時の労働基準法は、
契約期間を定めるときは
原則として1年までと定められていたからです。

最近原則3年以下となり、
特別な職種は5年までの契約期間と定められています。

念頭におかれているのは、
期間限定のスポット的なプロジェクトに従事する場合です。


2 裁判例の展開

問題意識として、正社員と同じ仕事をしているのに
雇用は不安定だわ、収入は低いわで、
あまりにも不平等ではないかという意識がありました。

また、実際は、何度も更新されて
その更新も形ばかり、あるいは自動更新という
あからさまなものも多かったのです。

これには歯止めをかける必要がある。
普通の人たちはそう思うようになるわけです。

先ずは、東芝柳町事件で、
名ばかり有期で、形式的にも
ほとんど無期契約だという場合
更新拒絶をする場合には解雇と同じように
厳重な要件を満たさなければならないと
最高裁判所は判断しました。

次は、日立メディコ事件です。
東芝柳町事件が昭和49年判決で
こちらは昭和61年判決ですが、
その間に、コンサルが暗躍し、
とにかく形だけでも更新手続きをしなければならない
ということを触れまわしました。

その結果、企業も、ヒアリングをしたり
履歴書を出させたり
契約書を作ったりと
手続的に更新をする形を整えました。

しかし、形だけという場合も多かったようです。

そこで、実質的に無期と言えなくとも
更新を期待するような事情があった場合は、
更新拒絶に解雇法理を類推適用させるという
最高裁判決が出ました。

ほぼ、この二つの判決で、
裁判実務は確立したと言えましょう。

3 行政指導の確立

二つの判決を受けて、厚生労働省は平成15年
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」20年改訂
という通達を出しました。

いろいろ場合わけがなされているのですが、
要は、
更新される期待が強い場合は、
雇止めが無効になりますよ
ということを徹底したわけです。

4 更新の期待が高くなる事情

従事する仕事の内容、勤務の形態、
利用できる施設なども差異がない
要するに、スポット的な助っ人ではなく
正社員と同じなら更新の期待も高くなるでしょう

更新手続きや、判断が形式的であり、
ここで拒絶される実質的理由がないという場合は
やはり期待が高まるでしょう。

個別事情として
あなたは更新を予定しているから就職活動をしないでねとか
事業計画で、その人が働くことが前提として予定されているとか
そういう場合も当然更新を期待するでしょうね。

同じ職種の有期労働者が更新されていることが普通で
当人にも落ち度がない場合も
更新されるよねと疑わないでしょう。

5 更新を拒絶される労働者側の事情

これまで判例で更新拒絶が認められた事例では
大学の兼任講師の事例がありました。
これは、そもそも大学の兼任講師は
社会通念上更新を繰り返すことが当然ではないと判断された上、
その人は、本職が別にあり、
その講師活動に収入を依存していないという事情が考慮されました。

同種事案としては大学進学塾の塾講師でした。

まとめると、
その人がむしろ高収入を得ていて、
その人の個性に着目した採用形態であり、
労働者性が強いとは言えない場合、

その職種自体が、ひとところに定住せずに
転職をしながらスキルアップをするような
流動可能な職種の場合
ということになりそうです。

6 ではさらにまとめて、何が根幹なのか

有期雇用とした意図・目的が合理的なものか
つまり、期間を定めることが合理的な職種か
つまりつまり、「必然的な理由がある有期雇用」
なのかということだそうです。

これに対して、雇用を打ち切りやすくするだけの名目的有期雇用は、
雇止めが無効になりやすいということになります。

7 念書の問題

労働契約法18条は、
有期雇用契約が更新されて通算5年となった場合は、
労働者が申し込みさえすれば
期限の定めのない労働契約になり、
厳格な解雇制限法理が適用されるとしています。

これには猶予期間があり、
この効力が発行するのは
2018年、平成30年です。

特に、名目有期雇用を導入している企業は、
これでは解雇ができなくなると
焦っているわけです。

そこで、労働契約法18条の適用を受けないように、
現在、
ただそれだけの理由で、雇止め(更新拒絶)を
している例があるそうです。

また、雇止めはしないけれど
今回の更新で最後とし、
次回は更新しませんと
労働者に念書を出させる企業が出ているようです。

先ず、それだけの理由での雇止めは、
多くが、判例や行政の基準に照らして
無効な雇止めとなるでしょう。

有期労働者の権利を向上させるために作った労働契約法で、
かえって労働者の雇用が不安になるということは
国にとっても噴飯物で、許されることではありません。

最近の安倍内閣の同一価値労働同一賃金への流れにも
全く逆行しています。

国を挙げて、制裁がなされることでしょう。

第2に念書ですが、
実は、これは必ずしも有効になりません。
念書があったとしても、
強行法規ということでもありますので、
他の要件が整わなければ更新拒絶は無効となります。

しかし、労働者自身が
念書を書いたということから
心理的に負けてしまい
権利を行使しなくなるということは大いにあるでしょう。

念書を要求されたら、
先ずは、労働契約法を知っている弁護士や
とにかく頑張る事例の多い労働組合に相談するべきです。
会社に労働組合がなくても
一般労組や合同労組という地域労組で
相談に乗ってくれます。

8 自分の雇用をどう守るか

最後にいろいろな知識も大事ですが、
心構えというかスピリットというか
もしかしたそちらの方が大事かもしれません。

それは、自分の主張こそが正当だと
確信を持つことです。

労働者の権利なんて
最初は何も認められていませんでした。

でも自分の主張が認められなければ
自分「たち」労働者の生活は成り立たない
という正当性の確信が

自分たちの主張が法的にも正しいという
規範意識に高まり
労働者の権利は承認されてきたのです。

そのためには、
苦しい、つらい、不安だという
そういうことを安心して言える仲間を見つけることです。
仲間が増えれば知恵も勇気もわきます。
冷静に志向をすることができるようになりますし、
何とかなるんじゃないかという余裕も生まれます。

その中で語り合ってください
漠然とした不安や苦しさを言葉にすることによって
初めて何が正しいか
どうあるべきか
そしてそれはわがままではなく、
正当性を確信する
私「たち」や社会全体の利益なのだ
ということに気が付くでしょう。

9 国、自治体へのお願い

こういうことで、国家法が
一部の企業によって捻じ曲げられ、
雇用不安が増大し
せっかく減少した自死が増加する危険が現実的になってきています。

先ず、自分たちが雇用している有期雇用労働者について
18年問題に絡めて雇止めにすることをやめてください。

国の政策、無期への転換を
公的団体として積極的に受け入れてください。

そうして、
関連団体の企業にも
不当な雇止めがないように目を光らせてください。

議会はくれぐれも監視してください。

10 労働組合にお願い

即刻、18年問題のプロジェクトを組んでください。
これは国の政策を労働組合が後押しするのですから、
労働運動の別にかかわらず、
何らかの緩い共闘を組んでください。

この問題で啓発活動をしないのならば
ナショナルセンターを名乗る価値がないと思います。

必ず、すべての有期雇用労働者に
情報を届けてください。

心よりお願い申し上げます。




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