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大津いじめ事件の大阪高裁判決(令和2年2月27日判決) 報道に現れた論理についての批判 [自死(自殺)・不明死、葛藤]



弁護士は、自分が担当して訴訟活動をした事件の判決以外は、
あまり判決批判をしません。
どうしてかというと、その判決が出た事情を知らないからです。

実際は報道されていない事情が主張立証されたかもしれません。
この事件においてはという限定した場合は
判決が妥当する事情があるということが多くあるものなのです。

特に民事事件の損害賠償額
刑事事件の量刑(懲役の長さ等)は
個別事情に大きく影響されますので、
あの判決の妥当性はどうですかと聞かれても
わかりませんと言うしかないのです。

しかし、この判決のこの論理についてはコメントをしないわけにはいきません。
このコメントも、金額そのものではなく、
その言いまわしということになります。
だから、厳密に言えば判決そのものの批判ではなく、
報道された判決の論理に対する批判ということになります。

それは大津のいじめによって高校生が自死した事件の
加害者とされた生徒に対する控訴審判決です。
1審の大津地裁の判決は
いじめと自死との因果関係を認めて3750万円の損害賠償を認めたけれども
控訴審判決の大阪高裁は、400万円を認めるにとどまったというのです。
この金額の妥当性はわかりません。
問題は高裁判決の論理です。

一番詳しいのは日経新聞だと思いますので引用します。
佐村裁判長は生徒の自殺に関し、遺族側に落ち度がなかったかどうかも検討。生徒が自ら自殺を選択していることなどから「両親側も家庭環境を適切に整え、精神的に支えられなかった」などとして過失を相殺し、約400万円の賠償額が妥当とした。

何が問題かというと
亡くなった生徒の両親が、家庭環境を適切に整え、精神的に支えなかったことが
両親の落ち度になると言っている部分です。

この論理には、言葉に出ていない前提論理が忍び込んでいるわけです。
つまり、
高校生の自死は防ぐことができる
自死を防ぐ主体は家族、両親である。
特に自死をしようと追い込んだ相手との関係でも
両親は自死を止めなくてはならない。
自死を止める方法は、
家庭環境を適切に整え、精神的に支えることだ。
これをすれば自死は起きない。
という論理が前提となっていると考えざるを得ません。

これは、今回生徒が自死したのは
両親が家庭環境を適切に整え、精神的に支えなかったことも
原因の一つだとしているわけです。
何か具体的事情が主張立証されたのなら私の批判は的外れですが、
およそ、高校生が自死をした場合は全部が全部
このような両親の不適切な事情があったと決めつけているなら大問題です。

先ず、自死の前に、自死者は何らかのサインを出すから
そのサインを見逃さなければ自死は予防できるという説がありますが、
およそ実務的ではありません。迷信や妄言の類でしょう。
なぜなら、うつ病患者など、自死のハイリスク者は
自死をしようということや、自死を考えている精神上であることを
自分の大切な人に隠すからです。

自殺のサインなんていう理屈は、
遺族や精神科医に精神的ダメージを与えるという効果の外は
あまり効果はないと考えています。

次に何らかのサインを、自死のサインかもしれないと思った場合
具体的に家族はどうしたらよいのでしょうか。
精神的に支えるとはどういうことでしょう。
そのためにはどういうふうに家庭環境を整えればよいのでしょう。

現在までに確立した方法や見解はありません。
特に、精神科医でも自死予防活動家でもない
一般のご家庭において、両親がどうすればよいかという方法については
特にこうすればよいということはありません。

むしろ、現実に自死をした人たちのご家庭では
家族が精神的に消耗していると思った場合は
思いつく限り手を尽くして手当てをしています。

ところが実際は自死を防ぐことができなかったのです。

数十以上の自死案件を担当してご遺族のお話をうかがう限り
例外はありません。

もし、生徒さんやご遺族が
生前、一般のご家庭と同様に普通に生活をしていた場合、
そして、いじめが始まってから自死するまでも
どのご家庭でも見られる普通の対応をされていたとするならば、
落ち度があると評価することは私には考えられません。

特別のことをしなかったから落ち度があるというのは不合理ですし、
特に、自死と因果関係があるいじめの加害者に対して
賠償金額を定めるにあたって、そのことを考慮して
大幅に賠償額が減額されるということは
不公平の極みだと感じられました。



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