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試行面会マニュアル 別居親がやるべきこととやってはいけないこと [家事]


1 試行面会の目的

夫婦が別居すると、その間に生まれた子どもはどちらかの親と同居し、どちらかの親と別居することになります。別居親と子どもが普通にあえていればよいのですが、同居親が別居親と子どもとの面会を拒否することになれば、当たり前の話ですが、親子ともども会いたいですし、子どもの健全な成長のためにも別居親と定期的に面会することが望ましいとされていますので、間に家庭裁判所が入って、面会交流の段取りをするわけです。これが面会交流調停とか、面会交流審判という手続きです。
同居親は裁判所が間に入っても会わせようとしないことが少なくありません。会わせないには理由が必要なので、ここで別居親が同居親に精神的虐待をしていてそれを子どもが見ていたとか、子どもに精神的虐待をしていたとか、子どもが会いたいと言わない、会わなくても良いと言っているとか主張するわけです。
そうすると、裁判所も何かあってからでは遅いし、子どもの福祉のために行う面会交流で子どもが精神的にダメージを負ったというのではまずいので、親子関係の実態を実際に観察して、面会交流を実施するか、実施するとしてどの程度の内容とするかを判断する必要性があるということになります。
つまり、試行面会は、その時面会できれば良いやということではなく、将来的な定期的な面会の在り方を決めるための試行ということなのです。
子どもが別居親を怖がってもいなしし、嫌ってもいないという事実をみせ、むしろ子どもが楽しそうに面会しているということがみんなの前ではっきりさせることによって、充実した面会交流の足掛かりになる重要な機会ということになります。
試行面会までは、同居親は別居親のDVやらモラルハラスメントやらを主張しますので、裁判所ももしかしたらそうなのかもしれないと半信半疑とはいえ疑いを持つわけです。裁判所に限らず「DV」とか「虐待」という言葉には抵抗力があまりありません。具体的に何があったかはあまり吟味せずに、暴力があったという言葉だけで相手方を警戒します。離婚事件では妻側のDVの主張があれば、書記官を警備に当たらせることがあります。こちらはどうして警備が入っているかわかりませんから、反論のしようもありません。ところが試行面会によって、子どもが嬉しそうに別居親と遊んでいる様子を見ると、裁判所関係者も手のひらを返したように別居親に対して共鳴共感を示してくるという事例は多く報告されています。
試行面会は重要です。できるだけ早期に試行面会が実施されるべきだと思うようになりました。

2 試行面会までの道のり
 
試行面会は重要なのですが、同居親が抵抗するとなかなか実現しません。最近は裁判官が積極的に介入し、同居親を説得し試行面会が実現するようになりましたが、介入が遅い。中には、会わせるか否かは親の自由意思だとして働きかけない人たちもいます。しかし、ここで考えなければならないのは子どもの成長という子どもの権利なのです。家庭裁判所は子どもの権利として実現に向けて努力するべきだと私は思います。
私がここで理屈を言っても、物事は進みません。裁判所が渋る同居親を説得するように誘導する工夫が必要です。また、その説得を受け入れるように同居親を誘導するという視点も大切です。
大切なことは、面会を求める同居親は、温厚で、子どもを会わせても、誰にも何も悪いことは起きないという安心感を与えることです。
一番多い失敗のパターンは、同居親が繰り出す、DVや虐待について、目を三角にして大声で口汚くののしって否定することです。あるいは、相手の些細な言い間違いをくどくどといつまでも執拗に指摘して、こちらが正しいということを頑張ることです。
違うならば違うと言えば良いのですが、いくつかの事情で、このような攻撃的な態度をあらわにする失敗が実に多いです。事情というのは、最愛の子度を引き離されたこと、自分が父親として夫として人間として否定されたと感じる被害者意識が一つ。これがあれば、放っておけば攻撃的になるかあきらめるかどちらかです。もう一つの事情は、同居親の主張が不正確であったり、正義に反する虚偽主張が許せないということも独立してあるようです。
気持ちはわかるのですが、この気持ちのおもむくまま行動すると裁判所では決定的に不利になります。「この人は自分の感情を制御できない人だ。家族の失敗を許すことができずに制裁をしようと常に考えてしまう人だ。誰が聞いても不愉快になるようなことを人前で平気で言う人だ。それならば多少の誤差はあったとしても、同居親の主張するようなモラルハラスメントもあったかもしれないな。」という思考の流れができてしまい、子どもに会わせると何が起きるかわからないと警戒を高めてしまうだけなのです。
相手の主張した事実は嘘だというよりも、「実際はこう言うことが起きていて、相手が言うこういうことは起きていない。しかしこういう事情から相手がこう感じたということはありうるかもしれない。」等と事実と感情を分離させて、相手の主張の共感できる部分を探し出してでも共感して見せた方がよほど有利になります。ここが踏ん張りどころです。
相手の主張に関わらず、相手の良いところは積極的に主張していくことも有効ではないかと思っています。
また、相手の言い分をよく聞くという姿勢が大切です。そういう事実があったか無かったかというよりも、相手が何を本当は言いたいのか考えながら聞くということです。そして賛成できる部分を抉り出して、加工してでも賛成を示すということ増やしていくことが大切です。
婚姻費用などの金額に争いがあったとしても、自分の主張する金額は調停成立前から払い始める申し入れをして払い始める。足りない分は後から払うからとりあえず必要だからと言って払い始める。これは、鉄則です。少なくとも養育費相当額は支払うべきだと思います。
このように、別居親が同居親を気遣ったり、配慮したりする態度を見せていき、温厚な対応に終始していけば、ヒステリックに面会を拒否する同居親と対照的な姿勢が際立っていきます。次第に面会交流の実施に流れが傾いていきます。
ある審判事件では、裁判官が、丹念に同居親の心情について話をさせて、いつのまにか試行的面会に向かう流れができてしまったという経験もあります。
詳しい話は省略しますが、一言で言えば相手に敵対する気持ちを持っていないこと、感謝と謝罪を示すということです。それが安心の材料になると思っています。

3 試行面会の実際

それぞれの家庭裁判所で条件が違うので何とも言えませんが、通常の支部ではない本庁と呼ばれる家庭裁判所では、調停で使う部屋とは別の階に、面会に使う部屋が用意されていて、おもちゃなどが豊富におかれています。靴を脱いで座れるようにパズルのように組み合わせるマットが敷かれていることが多いかもしれません。調査官が先に子どもと部屋に入り、一緒に遊んだり、子どもの遊ぶところを調査官が見ていたりして、後から別居親がその部屋に入ります。隣などの部屋でマジックミラーあるいはモニターなどでその様子を、代理人や同居親が観察します。調査官は面会の間中面会室にいて、内容を詳細に記録し、その記録を裁判官に提出して報告します。小一時間くらい面会をして、そろそろ時間だから片付けをしてというのも調査官の仕事です。
子どもが楽しそうにしていれば、全員がその事実を把握できるようになっています。ここで、些細なことで揚げ足をとって面会交流はうまくいかなかったと主張する弁護士もいます。しかし、そういう細かいことではなく、全体として子どもは別居親を怖がっていたり、嫌っていたりしたかどうか、調査官がいなくても二人の世界が築けたかどうかという事情を見ますので、些細な揚げ足取りは全く効果がありません。細かいことに気を使う必要はありません。小一時間と言っても久しぶりの二人が過ごすことは、途中で中だるみがあることが通常です。焦る必要はありません。
試行面会以降の調停や審判は、試行面会の実際をもとに進められることになります。ただ、代理人や当事者の感想と調査官の感想に違いが見られることがありますので、後に作成される調査官報告書は担任に読みこなす必要があると思います。少々厳しいことがあっても、今後の課題だと受け止めれば、大変参考になる指摘がなされていることが多いです。

試行面会の前に、電話やテレビ電話で、短時間でもゆったりとした時間を一緒に過ごすということは、試行面会を決定的に成功させるポイントになるようです。最終決定の前の間接交流はどんどんやった方が良いと思います。

4 では試行面会はどうすればよいのか やってはいけないこと

ようやく本題ですね。
ここでは子どもが楽しく面会の時間を過ごすということが唯一の目標です。
楽しく感じられない要素を列挙します。
・別居親と一緒に暮らしていないという罪悪感を強められる。
・自分の感情を出すことを妨げられる。
・自分のできないことをやらされる。<同居親に言うなということを言わせられる。自分の意思に反したことをやらされる。>
・同居親の悪口を言われる。
等々です・
もちろん、暴力暴言を受けたら楽しくありません。

やってはいけないことは感動の再開です。
それは久し振りであったのだから別居親はうれしいし、はたで見ていても涙が出ますから本人はなおさらでしょう。でもそれをやってしまうと子どもは重く感じてしまいます。また、子どもは年齢にもよりますが、自分が悪くもないのに別居親と離れて暮らすことに罪悪感を抱いています。感動の再開は会えなかった期間別居親が苦しい思いをしていたということを子どもにアッピールすることですから、子どもにとっては罪悪感を強められてしまいます。こんな思いをするならば会いたくないと感じてしまうこともあるようです。

また親が泣いてしまったり、興奮してわけがわからなくなると(実際にありますよ、それはわかります)、子どもは自分の感情をあらわにすることができなくなることがあります。しらけてしまうことがあります。あくまでも子どもために親が務めを果たすという意識で臨んでください。
子どもにあれこれと聞き出そうとすることはもちろん厳禁です。子どもが困惑してしまうからです。子どもは直接同居親に口止めされなくても、何となく言っても良いことと悪いことがありそうだということはわかります。子どもに負担を与えてはならないということは念のためにお話ししておきます。

同居親の悪口は、後の面会交流でも厳禁です。子どもは親の悪口を言われるのは、もう一人の親からだとしても大変苦痛です。自分の半分はもう一人の親だから当然です。

子どもが一方の親に連れされても、子どもが自主的に戻ってきてしまうパターンは、同居親とその親から別居親の悪口を聞かせられたこと、兄弟の中で自分が差別されたことという事情がある場合がとても多いです。それだけ親の悪口を言われると精神的に苦痛であり、悪口を言わない親の方が精神的に楽なので、そちらと一緒にいたいと思うようです。

5 では試行面会はどうすればよいか

私は必ず別居親の方に言うことがあります。それは
昨日も会っていたように、明日も会うように
という接し方です。これは鉄則のようです。

例えば「やあ」とか「よう」とか、当たり前のように挨拶をして、ニコニコ入ってくれば、子どもは
・自分が別居親から同居中と変わらずに愛されていると一瞬にしてわかる。別居親は何も変わっていないとわかる。
・別居親は離れて暮らしていることに逆上しているわけではなく、罪悪感を抱く必要はないということも一瞬でわかる。
・別居親は喜んでくれているのだから、自分は自由に感情を爆発させても良いのだと一瞬にしてわかる。
・自分は別居親といつもの空間で生きていると感じる。
・自分はそのうち別居親と自由に会うことができるようになる。

つまり、はたから見ていると、一瞬の後、これまでの日常の中に二人が舞い戻って、いつもの親子の時間を過ごしていると感じるものです。

こう考えると、服装などもいつもの格好が良いのかもしれません。

最初は、別居親が入室する前から子どもは面会室にあるおもちゃで遊んでいますから、そのおもちゃで一緒に遊ぶとよいと思います。親から遊びを提案するよりも、子どもに任せた方が良いと思います。「たくさんおもちゃあるね。これ前にやったことあるね。」と水を向けるのは良いのですが、子どもがリクエストした遊びを一緒に楽しむということがよいでしょう。特に子どもが女の子の場合は、子どもにリードしてもらうことが鉄板です。子どもの様子を良く感じ取るということが大切です。しかし、最初の挨拶がうまくいけば、同居中と同じ感覚で時間を過ごせばよいので、あれこれと思い悩む必要はありません。
どうしても心配ならば、気の利いた子ども向けジョークを三つくらい用意しておくとよいかもしれません。話題は、昨日今日の自分の体験ということで良いです。昨日も会ったのだし、明日も会うのだと思えば、そんなに構えて親子は会話をしないと思います。子どもが小さいならば、本を読んであげるということも良いですが、これも子どものリクエストがあっての方が良いです。
それでも、気づまりな感じで最初がうまくいかなかったら。
とにかく静かに楽しそうにしていることです。おもちゃで遊んでも良いですし、何か気の利いたことを話し出しても良いです。子どもは楽しそうにしている大人に寄ってきます。焦る必要は何もありません。子どもが退屈していても、大人が楽しそうにしていて、最終的に大人に興味を持てば成功だとして良いと思います。嫌がられたり怖がられたりしていなければ、まずは失敗ではないというくらいでいましょう。
別れ際もぐずぐずしない。どうせまた明日も会うのだからという雰囲気を親が作ってあげてください。ここ大事です。子どもは別れ際の寂しさ、辛さを感じなくて済みます。そうすると、純粋に楽しい体験になります。別居親が退出した後、短い時間調査官と子どもが二人きりになります。この時、子どもがニコニコしているか、悲しさや負担感を漂わせているかによって、印象が全く違います。この時子どもが、「この次会う時は・・・」なんて期待を語り出すと、是が非でも定期的な面会交流を実現させようと思うことは人情だと思います。

6 アフターフォロー

目標はあくまでも定期的な面会です。試行面会の直後が大きなポイントとなります。試行面会後、調停委員が両当事者から感想を聞くことが多いと思います。もちろん率直に感想を語ることはよいのですが、感想というよりも半ば儀礼的な発言をすることが効果的です。同居親に安心感を持たせるチャンスです。
誰でも久し振りに子どもに会った親は共通の感想を持ちますが、先ず子どもがちゃんと育っていて安心したということです。これははっきり調停委員に伝えて同居親に調停委員に言ってもらいましょう。
もし、このような感想会がなければ、自分の代理人を通じて、相手方の代理人にファクシミリでも入れてもらうとよいでしょう。
無事に育っていて安心したこと、1人で育ててくれたことに対する感謝、ねぎらい、今日子どもを連れてきてくれたことに対する感謝などです。
子どもを引き離した相手にこういうことを言う気持ちになれないかもしれませんが、作戦だと思って、子どものためだと思って実践してください。敵対心が無いと分かってもらえれば、その後内容が決まる定期的な面会交流の取り決めにとっても計り知れない効果が生まれます。

事情があって、夫婦が仲たがいして別居しているわけです。そのこと自体についてどうするかは私の意見するところではありません。しかし、子どもは同居親とも別れたくないし、別居親ともできるだけを多く会っていたいと感じることが圧倒的多数です。子どもができるだけ自由に別居親に会えるように、それを第1に行動して欲しいと思いますし、それが親の義務なのではないでしょうか。そのためには、父親と母親の間に最低限の信頼関係、安心できる関係が無くてはなりません。最初は嫌々、作戦として感謝を述べていても、感謝を述べ続けているうちに、後から心はついてくるものです。試行面会は、親どうしの訓練の場でもあるのかもしれません。

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