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子の連れ去り事案で、相手方ないし相手方代理人と連絡が取れる場合にするべきこと、してはいけないこと [家事]



「ある日、妻が子どもを連れて家を出てしまっていて、どこに行ったか分からない」といういわゆる子の連れ去り案件は決して減ってはいない状態です。しかしながら、奇妙なことに残された夫側の代理人技術というものはあまり進化していないように感じられます。ただ、連れ去り側の代理人の行動がシステマティックに練られているっているような印象を受けます。

連れ去りがあっても、妻とラインがつながっていることもありますし、本人とは連絡が取れなくても妻側の代理人の受任通知が届くこともあります。ここが肝心です。ここで、純粋な本心で対応できれば良いのですが、それがなかなかできない。あたかもその弁護士が連れ去りをそそのかしたかのように攻撃的になってしまうことが、むしろ多いのではないでしょうか。

しかし、その結果は、当然妻の代理人の夫への態度を硬化させますし、代理人は聞かされた妻の思い込みのように夫は暴言や誹謗中傷を毎日のように妻にぶつけていたのだろうという偏った見方を固定化してしまいます。また、妻は、夫の怒りの対応を代理人から告げられると、やっぱり夫は怖い存在であり、嫌悪するべき存在だという思い込みが、真実だと確信してしまう効果しかありません。メリットは何もなくデメリットしかありません。

先ず、家族再生を目指すのか、きれいさっぱり離婚するのか、腹を決めなければなりません。以下は家族再生を目指すことを選択した場合になすべきことを述べます。

家族再生を目指すならば怒りを少し他所(よそ)に置いておく必要があります。

気持ちはわかりますから私から「怒るな」とは言いづらいので、しばし他所に置いておくという言い方をしました。連れ去りなんかしなければ、怒りが出てこないので本当はうまくいくのになあといつも残念に思っています。

他所に置くということは、
1 怒りの気持ちを相手や相手方代理人にみせないということ
2 怒りの発想でこれからするべきことを計画しないということ
です。

1 まずは無事を確認出来て安心したはずです。安心したということをしっかり伝えることが最優先です。つまり心配していたということを伝えるということです。しばしばこれが省略されてしまいます。怒りに変わっているから忘れているわけです。

  次に、連絡をいただいたことの感謝を伝えることです。感謝をしろと言っているのではなく、無事を伝えていただいたことに感謝を伝えるだけです。気持ちはどうでもよいのです。

  そして、心配していることを伝えましょう。経済的問題や健康問題、さらにはメンタル上の問題です。怠薬していないかとか、お金が無くて通院できないのではないか、子どもはそれまで環境から一方的に別の環境に置かれてしまっているので戸惑っていないか。などでしょうね。

 つまり、怒ることによって崩れそうな自分を支えているために、本当の気持ちが自分でも見えなくなっているわけです。だから、怒りを捨てることはできないとしても、怒りを他所において、「妻と子どもが突然いなくなって、どんな状態かまるで分らなかったのに、とりあえず妻の代理人から連絡があり妻が無事であることが確認できた場合、どういう風に行動することがあるべき行動か」ということを冷静に考えて、その考えに従って行動しなくてはならないということなのです。

 そうすると、突然の子連れ別居をしているということは、相当精神的に不安定になっていることは間違いありませんから、味方になる弁護士がいるということであれば、自分の妻子が世話になるのですから、感謝の言葉を伝えることが当たり前のことになるわけです。しつこいですが、本心は別で構わないのです。

 本人から連絡が来たら来たで、かなりの努力をして連絡をしてきているのですから感謝やねぎらいの言葉を発するということが大事です。

 本人は、色々な事情で夫と同居することに不安や不快、嫌悪を感じています。必ずしも夫に原因が無いことや主たる原因が別にあることがほとんどです。だから、家族再生を目指すのであれば、目標は一つです。「妻を安心させること」これに尽きます。不安がらせる行動を行わないで、安心させる言動を意識的に行うことです。

 そうすると、いなくなって当然心配するわけですから、先ずは心配していたということをはっきりと述べることが必要ですし、無事がわかれば安心したということをはっきり述べることが必要です。相手方代理人は、夫について妻から思い込みによる歪んだ情報しか得ていませんから、怒りではなく、「一番良い方法で」対処しようとしているという姿勢を示さなければなりません。

但し、連れ去り側のマニュアルでは、夫は狡猾に紳士を装うというものがありますから、直ちに連れ去り側の弁護士が安心することはありません。決して怒りを見せず、心配を言葉にし続けることが肝心になります。

2 怒りの発想で対応のプランを立てない

怒りは、自分が被害を受けた場合だけではなく、道理や道徳、法律や合理性に反する行動に対しても起きてしまいます。だから連れ去りで怒りが生まれるのは当然です。さらに、放っておくとうつ状態になってしまってとても苦しい状態になるけれど、怒りを持つことによって自分を保つことができるということを経験的に覚えてしまい、相手に対して無制限の怒りを抱いてしまう場合があります。

そうするとこれからどうしようということで、まず考えてしまうことは相手に対する制裁です。

だからと言って相手を襲うことを考える人はいません。警察や裁判所を通じて相手を制裁することをどうしても考えてしまいがちです。まじめな人、責任感が強い人ほど裁判所を通じて当たり前を実現したいという気持ちになります。場合によっては本人以上に家族がそういう考えになることも少なくないでしょうね。

その真面目さに従って、ネットで調べて、監護指定・子の引き渡しの審判を申し立てたり、仮処分を申し立てたりするのですが、私は今の家庭裁判所の実務ではメリットはなく、デメリットは確実にあるというのが感想です。(ただ、それでもやらなければならない場合がありますので、それはまたいつかの機会にお話します。)

メリットが無いというのは、それでまず裁判所がこちらに子どもを引き渡せという命令が通常は出ないということです。私は代理人として、一度どうしても必要であったため子の引き渡しの審判を申立てて、認められたことがありました。しかし、諸事情で控訴審の代理人に選任されなかったところ、控訴審で逆転敗訴になったようです。妻の「子どもに夫を面会させる」という空手形で判断が逆転したみたいです。当然妻は約束を実行しません。約束を実行する人か、裁判を有利にするための口から出まかせかもわからない人たちが高等裁判所の裁判官をやっているわけです。

デメリットというのは、子の連れ去りを裁判所がお墨付きを与えた形になること、妻側の夫に対しての敵対的姿勢を固定化すること、何よりも夫は安心できない存在だという気持ちも固定化してしまい、家族再生がさらに遠のくこと、そして弁護士費用が掛かることでしょうか。自分の妻に対する敵意も高まってしまうことも結局はデメリットだと思います。

怒りに基づく行動は、家族再生という目的と反対方向に向かう効果を生む行動を起こしやすいという弊害があるわけです。

私の依頼者ではありませんが、妻に対して報復をして子どもを取り返した夫は、それまで聞いたどんな人よりも妻に対しての憎しみと怒りを言葉にしていた人でしたが、妻に対しては全くそのようなそぶりを見せず、過剰なほどサービスまでして目的を実現していました。

ただ、なかなか怒りを制御することは難しいことです。どうしても人間である以上、自分を守りたくなることは本能的に仕方が無いと思います。その人が怒りを持ちやすいのではなく、怒りを持たされやすい環境に叩き落されたからだと思っています。

そういう場合は、自分で自分をコントロールするという無茶をしないで、代理人に窓口になってもらうということも選択肢とをしてお持ちになった方が良いと思います。

但し、怒り他所に置いていて家族再生を目指すという代理人活動がなかなかメジャーになりません。そもそも妻が子どもを連れて別居するのは、夫のDVが原因ではないかという思い込みを持った法律家があまりにも多すぎるような気がします。夫のDVが無くても子連れ別居はあるという認識を持てる弁護士もいるのですが、その多くが正義の弁護士が多く、戦う戦略をとることが多いようです。なかなか遠方の依頼者に紹介できる弁護士がいないということが目下の悩みです。


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