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貧困から凶悪犯罪に至る経路 [刑事事件]



よく貧困が犯罪の温床となるとか、社会政策こそが裁量の刑事政策だと言われていて、生活苦と犯罪が関連していることはよく言われることですし、その通りだという実感があります。

ただ、「貧困だから生活費が無い、だから生活費を稼ぐために犯罪によって金銭を獲得しよう」ということだと短絡的な考えも多いのですが、これは貧困と犯罪の関連性の説明としては間違っているようです。

住宅ローンを抱えて子ども三人の養育費を裁判所の命じた通りに支払っている男性は、朝はコンビニのおにぎり、昼はディスカウントストアでまとめ買いをしたカップ麺で、夜は自炊しているという話でしたがまだ良い方でした。

同じ様に住宅ローンを抱えて婚姻費用を抱えているお父さんは、電気代節約のため、換気扇の明かりで生活していると言っていました。換気扇に明かりがつくことは知りませんでした。

実際に重大犯罪を行った人は、給料が入っても寮費などが天引きされる上、前借金の返済、サラ金の返済、自動車ローンその他でお金が無く、ご飯に焼き肉のたれをかけて食べていただけだったそうです。

この人のケースに焦点を当てて説明します。

彼は、20代男性です。そんなに悪いやつとは思えません。敬語もきちんと使えますし、他者に配慮もできています。
ただ、何をやってもうまくいかず、例えばローンで自動車を買ったのですが、ローンの途中で事故を起こしてしまい、もう一台車を買わなければならなくなりました、ローンを二重に払っているわけです。その他にも人間関係で、悪い人に捕まってしまい、示談金を払っていました。仕事をやったら約束した報酬が支払われないとか、そんなことばっかりで支払いが多くなってしまいました。

サラ金からお金を借りても、返すプラス財産が無いので、借り手は返すを繰り返していました。ないところからいろいろ払うわけですから、考えても財源は無いのです。満足に考える余裕はなく、次から次への支払い期限が来て、何とかつじつま合わせをしているという状態でした。本当ならば自己破産をすることになるのでしょうけれど、そのような情報は彼の閲覧している動画には出てきませんでした。

彼は凶悪な財産犯となるのですが、ここでも運の悪いことが起きてしまい、極悪な財産犯になってしまいました。

ただ私は不思議に思ったのです。彼の借金というか支払うべき金額は、かなり膨大な金額でしたから、その財産犯をしたところで、借金を返し終わるわけはないし、何を目的でその犯罪を行ったのかわからなかったです。

彼の話によると、借金を返し終わることはできないが、ある程度余裕ができ、自分の収入で借金を返していけるようになるのではないかと思ったようです。それも明確に金額を見積もっているのではなく、なんとなくそうではないかということでした。

彼が凶悪犯罪を行った一つの理由は、明白に落ち着いてものを考えることができず、今の極限的な状態から少しでも楽になるということくらいしか考えられなかったことにあるようです。だから、自分がその犯罪を実行したところで成功するかどうかとか、いくら金をとれるかとか、逃げられるかなどということは、気にしてはいたけれどまともには考えなかったということでした。

彼の話を聞いてもう一つ理由がありそうでした。
彼の貧困の状態は結局米にたれをかけて生きていたということですし、何か夢中になれる趣味や、かけがえのない友人関係もなかったようです。何をするにもお金がかかるので結局はお金の問題かもしれません。動画サイトで犯罪の動画ばかりを見ていたようです。もっと給料が上がるような職業はどこかにはあっても、彼の選択肢には上がってきたこともなかったようです。ただ生きていても、社会から尊重されている、自分が誰かから尊重されている、自分が生き生きと充実して生きているという実感なんて考えたこともない生活だったそうです。

それを端的に表した言葉が
「死ぬことは嫌だけど、別に怖いとは思わない。」
でした。

これは、
「犯罪は悪いことだとわかるけれど、逮捕されて刑務所に行ったところで、今よりはましな生活になる。」
ということと同じ意味になる危険が高いと思います。

つまり、凶悪犯罪と貧困を結び付けるもう一つの流れは、「その犯罪をすると、自分の立場が悪くなる。だからしない。」という人間の本能が働きにくくなるということにあると思うのです。


令和5年がもうすぐ終わるわけですが、
令和6年は、ますます、不可解な犯罪、残虐な犯罪が増え、反省をすることがなかなか困難な境遇の人たちが増えていくように思われて仕方ありません。



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