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【宣伝・広告3】本日発売! 「イライラ多めの依頼者・相談者とのコミュニケーション術」(遠見書房) 心理士と弁護士の東日本大震災後の自死対策活動のコラボレーションの中から生まれた本 [自死(自殺)・不明死、葛藤]


http://tomishobo.com/catalog/ca126.html

本になってみて気が付いたのですが、「はじめに」という個所(私が書いた)や「あとがき」に自死対策や自殺予防などという言葉がやたら出てきて、初めて読まれた方には訳が分からない感じがするかもしれません。

実はこの本は、実際にこういう経緯の中で生まれた本なので、裏話シリーズ第3弾として、その内訳をお話ししようと思いました。

東日本大震災から10年が経ちました。私の歳のせいでしょうか、まだ10年しかたっていないということが実感です。今年は10年目ということで津波の映像がテレビでバンバン流れたのですが、とても平気でいることはできません。かなり具合が悪くなりました。

震災直後、仙台ではこのあと自死が増えてしまうのではないかという心配の下で、様々な活動が行われました。自治体での精神保健活動や民間のワンストプ相談の立ち上げや、解決策の研究会等、様々な人たちが様々な活動を行いました。特徴的なことは、業種の垣根を越えて、研究や実践の交流を行ったり、共同での相談活動を行ったりというところでしょうか。何かもっと良いものを求めてみんなどん欲に考えていました。今はそれほどではないにしても、それでも、この人からお話を伺いたいと思えば、連絡を取ってみるということは昔よりも気軽にできるようになったような気がします。

この本の心理監修をしていただいた東北大学の若島孔文先生は、被災者の救助活動をしていた警察官や消防職員、自衛官といった人たちのカウンセリングを精力的に展開されていらっしゃったと伺っています。仙台市の自殺対策連絡協議会でも、当時先生は宮城県の臨床心理士会の副会長をされていて仙台弁護士会の担当者であった私も協議会をご一緒していました。ちょうどその頃、若島先生のお師匠様の長谷川啓三先生(東北大学名誉教授)とも偶然ボランティア活動みたいなことをご一緒する機会があり、いろいろ勉強させていただいたのですが、若島先生をご紹介いただいたという感謝しきれないできごともありました。
震災後は、出会いの機会が大変多くあったと思います。

仙台弁護士会は、震災の直前ともいうべき平成21年から自死対策プロジェクトチームを発足させ、他の弁護士会に先駆けて弁護士会として自死対策に取り組み始めました。私もメンバーですが、それまで私は過労自死の問題しか取り組んでこなかったということもあり、何をどうするのが弁護士会としての自死対策なのかが全く分かりませんでした。幸いなことに宮城県医師会のご協力を得て、シンポジウムをやったり協定を結んだりして、マスコミにも取り上げていただきました。自死問題は個人的な問題ではなく、社会的な問題だとアッピールできたと思います。
弁護士向けの自殺対策マニュアルも作成していたのですが、震災のために印刷がずれ込むということもありました。そのマニュアルの中で、自死が多いと、離婚が多い、失業率が多い、犯罪認知件数が多い、破産件数が多いという統計的な関係があることに目をつけてマニュアルの序文で発表しました。つまり、弁護士という職業は、自死のリスクの高い人と接する職業であるというようなことを主張しました。

県の心理士会も自死対策に取り組むということで、担当副会長だった若島先生にお声をかけて弁護士会と共同で対策を検討しましょうということで、東北大学に行って研究会を始めたような気がします。いつしか、県の心理士会が抜けて、先生の研究室の学者さん方に引き継がれるような形で、実践的なコラボレーションが開始されました。

弁護士の依頼者の中で、事件の問題もあって葛藤の強い、自死リスクの高い方がいらっしゃって、それでも法的問題を抱えていて、弁護士だけの対応だけでなく、カウンセラーのカウンセリングも並列的に行いながら裁判を乗り切るということが行われました。
うつ的傾向がある方が離婚調停を起こされて、ますます不安定になった事例
暴行事件の被害者の方の事例、
刑事事件の被告人、
と事件は様々ですが、やはり家族問題が多かったと記憶しています。

依頼者の許可を得て、事案の報告とカウンセリングの効果の検証などを行い、次にするべきことを検討したり、依頼者の心の状態の解説を受けたりと、極めて実践的で、心躍る時間でした。
それから、弁護士自身の精神問題についても研究は進み、弁護士が事件の中で心が折れた事例の報告などについても解説をいただき、対処方法を話し合ったりしました。

リスク者への個別対応ということを丁寧に実践的に研究していたということになりましょうか。

2018年には、若島先生の研究室が主体となり、日弁連の協力も得て、弁護士が業務で出会う自死リスクについてのアンケート調査を実施しました。弁護士は長く業務を続けるほど、依頼者の自死を経験する可能性が高くなり、多くの弁護士が依頼者の自死や自死未遂を経験しているという結果となりました。業務の分野としては、債務関係、家族関係、刑事事件が多いという結果になりました。

そうこうしているうちに、弁護士会の自死予防対策の概要が見えてきました。葛藤の高い人、自死リスクの高い人が弁護士の元を訪れることはそれほど期待できない。むしろこちらからその人たちの元に出向いて行って、弁護士という敷居を下げなければならないということが一つです。もう一つとしては、葛藤の強い人、自死リスクの高い人の、相談の機会を増やすことが必要だということで、例えば無料で弁護士が相談を聞くということであれば、話しても良いかもしれないと思うのではないかということです。自分の心理、精神の相談ということは敷居が高いけれど、その原因となっている対人関係の解決ということであれば、相談しやすいのではないかということです。東日本大震災の影響を受けて弁護士会としての予算が心もとないということであれば、各自治体の自死対策として、高葛藤の人向けの弁護士相談会をしてもらうということを考えました。

実はこれは仙台市では実施されています。純然とした法律相談ではなく、自治体の保健所の保健師さんや心理士、ケースワーカー、医師と一緒に相談を行うということで、できれば定期的な開催にするということです。
葛藤の高い人が相談に来やすい相談会の名称がポイントになるかもしれません。

さて、そうなると、どんな弁護士が担当しても良いというわけにはいきません。葛藤の強い人の葛藤をさらに高めるような回答をしていたのでは本末転倒になります。そもそも行政の方も弁護士に任せることができるだろうかと信用してもらえないのだと思います。

これに備えて、希望する弁護士に、研修をしてもらい、マニュアルも作成して(最近マニュアルがはやりのようですが、作るのは楽しいですが、活用には疑問がないわけではないのですが)、参照資料として提供しなければなりません。そうして、必要な研修を終えた弁護士を例えば「カウンセラー弁護士名簿」という名簿に登録して、自治体の相談会の担当を名簿の中から選んで派遣するというシステムが必要になります。

どうやって研修をやって、どうやって研修資料を作るかということの解決が先ず行われなければならなかったわけです。
本書が企画されたのは、こういう事情が元々はあったということです。但し、弁護士会の研修と言っても、弁護士だけで行ったのでは危険であります。そういうことで若島先生に図々しくお願いに上がったところ、本書の一般的な出版という話になり、本の内容も少し変わり本書が今日発売されるという運びになったわけです。

研修会の専用資料は別途作成しました。もう少し実務的な細かい話が具体的に盛り込まれています。服装や視線をどこに置くかとかそういうことから記載されています。当初の予定では、この本もそこまで盛り込んだ本にすることが予定されていましたが、いつの間にか誰かが原稿から落としていました。今一番有力な犯人は私で、執筆していなかったから落ちたのかもしれないということがオチのようです。おかげで一から執筆しなければなりませんでした。これも東日本大震災の被災者相談のマニュアルを作った経験が大いに役に立っています。

あまり書店には並ばないと思いますが、もし見つけたら手に取って目次だけでも見ていただければ幸いです。

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【宣伝・広告2】本日発売! 「イライラ多めの依頼者・相談者とのコミュニケーション術」(遠見書房) 家事紛争の中から生まれた一冊であるということ [家事]


本日(令和3年7月28日)私も関わった本が発売日を迎えました。
http://tomishobo.com/catalog/ca126.html
法律系の出版社の理解を得られなく、心理系の出版社である遠見書房様の英断で発売にこぎつけました。この本が出なければ、この問題がいつまでも取り残されると思うと、ご英断に感謝しきりです。せめて採算ラインまでは売り上げをもっていきたいということも、宣伝記事を載せる理由ではあります。

この本は、体裁としては、弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、税理士等の、法律家向けの本ではあります。しかし、あとがきで心理学研究者の東北大学教授若島孔文先生がお書きになったとおり、対人関係を職業とする皆さんに読んでいただきたい本です。特に、行政職、福祉職、お医者さん等医療関係者の皆さんに是非読んでいただきたいと思っています。
そのプロフェッショナルの方の気持ちが軽くなるとともに、クライアントの方々が理解されることによって、必要なサービスを気持ちよく受けることができるようになるのではないかなと思うからです。

宣伝はこのくらいにして(社長様すいません)、裏話をさっそく始めたいと思います。
実は、この本は、家族問題の研究がもとになってできた本ということもいえるのです。
第1部は、弁護士の実際の事件、相談会のリアルな断片を切り出して事例を作って示して、その解決方法を考えています。この最初の事例をわかりやすく書いていただいたのは、主として大久保先生です。私にはこういう才能が乏しいということがつくづくわかりました。先生は、家族問題や女性の権利に造詣が深いということもあって、紹介している事例の多くが実は離婚事件のケースです。次いで職場のパワハラ・セクハラがあり、相続問題、金銭問題、近隣問題が取り上げられています。まあ、弁護士の相談会でよくある事例です。誰でも経験している内容といえるでしょう。この事例の紹介の仕方が一味違う。私のような偏った考え方(本来あるべき考え方だと思うのですが)の弁護士ではなく、良識的な弁護士も離婚事件については疑問を抱くことが多々あるということが紹介されています。虚偽DVの問題や、父親への親権変更の事例等きちんと取り上げてくれいます。すばらしい。
私の紹介は、このブログの別の記事をいくつか読んでいただくとわかるので、特に家事関係ですが、省略します。
心理監修の若島孔文先生は、あらゆる心理学分野の理論と実践理論をマスターされていますが、家族療法という心理療法の日本における第1人者です。世界的にも著名な先生です。家族の在り方という問題を見つめ続けていらっしゃるわけです。
そうすると、この本は、弁護士など法律家と依頼者、相談者という人間関係の断面を切り取っているのですが、その人間関係の在り方についての知見は家族の在り方についての考察を基礎としているということになると思います。

だから、この本は、接客業という職業とクライアントという体裁をとっていますが、実は、家族同士の関係にこそ応用が利く内容が書かれているのです。但し、焦点の合わない本は出版できませんので、深く読みこなさないとそのことを理解することは難しいかもしれません。特に第2部を読みこなしていただきたいなと思います。

本当は、既婚者必携「イライラ多めの家族とのコミュニケーション術」という本を作れれば良いのでしょうが、そんなオファーが本当に来るとは思えませんので、申し訳ありません。弁護士がこういうことに取り組んでいるということはなかなかピント来ていただけないと思います。でももし来たら全力を挙げて執筆します。

ちょっと要約版を作ってみますね。
<楽しい夫婦であり続けるためのちょっとした工夫
そして紛争後の夫婦再生への挑戦>

第1部 楽しい夫婦であり続けるとは
 1章 妻が夫と同じ空気を吸いたくないというまでの道のり
    離婚したいと思うまでの葛藤とは、どういう心理状態か
    離婚したいと思うのは、自分が尊重されていないと感じるから
    尊重されていないと感じる事情はどういうものがある
      「暴力、暴言、物にあたる」だけではない
       本質は別にあるので、ここを否定しても心は動かない。
    味方ではなければ敵だと感じてしまう人間の脳。安心できない存在は不快な存在
 2章 円満な関係であり続けるちょっとした工夫
    尊重は相手に伝わらないと意味が無いが、「尊重している」と言っても伝わらない。
    話を聞いてうなずくということ
    相手に任せるということ
    その他のチップス
 3章 根本的な考え方は思い出の中にある。実はあなたが変わっただけ
    デート中のレストランを思い出そう
    価値基準をどこに置くか。
     正義や論理、合理性よりも相手の感情を行動原理とすること
    家内安全という普遍的な原理を見つめ直そう。
    本当はもっと必要とされているあなたという存在。
第2部 別居後の家族再生への挑戦
 1章 子連れ別居時の妻の心理 著しい高葛藤
    蓄積された「尊重されていない」という感覚
    事実は本人も自覚していない。しかし、今の感情は真実。
    原因はあなただけではないが、あなたの対応でずいぶん変わっていたはず。誰が良い悪いでは深淵に踏み出せない。相手に期待できない場合は自分が何とかするしかないということ。
 2章 修復のために何を獲得目標にするのか。
    「加害」をしないということでは足りない。
    反省ばかりでは重苦しい。
    明るく楽しい将来の約束。その裏付け。
 3章 相手に何をどう伝えるか
   どう伝えるか
    別居はしたけれど、連絡が取れる場合
    本人には連絡が取れないけれど、間に入ってくれる人がいる場合
    間に弁護士が入った場合や離婚調停を起こされた場合
   何を伝えるか
    安心を与えるということ
    先ず生活費の支払いをこちらから申し出ることが鉄則
第3部 家族再生のための離婚調停、離婚訴訟、保護命令
 1章 離婚訴訟の現実 
    どういう場合に離婚の結論になるか、どういう事情があると離婚請求が棄却されるか。一方の離婚の意思が固い場合。
    離婚訴訟の結果を考えるべき一番の要素は子どもであるということ。
 2章 保護命令手続きの現実
    法律要件と乖離する1審手続き
    初めから相手方は不利な構造の中での戦いだということ
 3章 調停
    すべては調停で完結するべきであるということ
 
第3部は別の本だね。



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