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時間外労働100時間という形式的観点で規制すると合理性と必要性 [労災事件]

【事前お断り】
本当は、厚生労働省のガイドラインでは
時間外労働一月当たり45時間を超えると、
脳や心臓の血管疾患と業務は関係を持ち始めるとされています。
間違っても100時間まで働いても良いということではありません。


それでも、100時間以上働かせることについては
何が何でもだめだという主張は合理性と必要性があります。


時間外労働100時間と死の危険性
「月当たり残業時間が100時間を越えたくらいで過労死するのは情けない。」
と授業料を払って過労死に誘導されないために、
武蔵野大学の学生は人間らしい関係の構築を学ぼう。 
http://doihouritu.blog.so-net.ne.jp/2016-10-09

でも言いましたが、
厚生労働省の過労死認定基準のもとになった統計調査によれば、
月当たり100時間の時間外労働となると、
1日当たり平均して4時間の睡眠時間を確保することが難しくなるとしています。

このような睡眠時間になってしまうと、
有意的にくも膜下出血や心筋梗塞など脳血管疾患、
心臓血管疾患のリスクを高めます。

また、精神疾患についても、
月当たり100時間の時間外労働に従事すると精神疾患のリスクが高まるというのも
厚生労働省の精神疾患労災認定の専門家検討会で話し合われていることです。

これらのことは、自律神経系統の作用によるものです。
根性で耐えるとか、意識的に改善するということはできません。

そういう意味で、健康を守るために、
100時間の時間外労働は認めないようにしようということは、
主張として必要だということになります。

これは、確かに万人が
100時間時間外労働をするとくも膜下出血になったり、
心筋梗塞になるわけではありません。
しかし、明らかにそういう病気になって
死ぬ危険性が高まるということなのですから、
規制する必要があるという考えなのです。

100時間の時間外労働にストレス要因はつきもの

上記の精神疾患の労災認定のための専門家検討会で確認されたことなのですが、
月当たり100時間の残業が起きる場合、
通常、何らかのトラブルやノルマの不達成等
心理的圧迫を加えられる出来事が付随することが多いそうです。
何もなくて、月当たり100時間の時間外労働が起こるということは
むしろ少数ということになります。

100時間の時間外自体が人間性無視

考えてみれば、月当たり100時間の時間外労働とは、
9時から6時の定時から月曜日から金曜日まで
毎日4時間の残業をして、週20時間の残業、
これが月は4週だから80時間。
その他に土曜日か日曜日毎週5時間の出勤をするこれで100時間です。

平日は10時退社とはいっても、すぐに帰宅できるかどうかわかりません。
11時に帰宅したとしても、掃除洗濯入浴、大抵は帰宅後夕食ですから、
なんだかんだ言って確かに1時過ぎないとベッドに入れませんし、
就寝は2時ころということが普通でしょう。

9時に出勤するため、7時過ぎには家を出る人が多いのではないでしょうか。
土曜日は、私の見てきた事例では、お昼前後に出発して、
夕飯に間に合うように帰ってくる。
日曜日は昼過ぎまで寝ている。ぼーっとしているうちに夕食の時間になる。

これが人間らしい生活と言えるのでしょうか。
あなたの夫なり妻なりが、このような会社人間だったら、
それでも愛は冷めませんか?
あなたの親がこうだったらどうでしょう。

やりがいのある仕事だったら、100時間働いても平気でしょうか。
1か月続けることだって、青色吐息で、
やりがいのある仕事も苦痛になっていくとは想像できないでしょうか。

100時間の時間外労働はそれ自体が、
人間性を尊重しない働かせ方だと言えると思います。
これはやめさせる指標にしなければなりません。

予防の観点から時間規制の明確性

もう一つ予防の観点からも、
時間規制ということが合理的だと思います。
仮にやりがいがあれば残業も苦にならないといっても、
やりがいがあるかどうかを場合分けすることなどできません。
あなたはやりがいを感じるから大丈夫、あなたは感じていないから・・
とすることは不可能です。

逆に、これはやりがいがある仕事だからということで、
時間外労働を正当化する企業も出てくるかもしれません。
また、パワハラとか、居心地の悪さというのも、
その人の立場によって違います。
ある人はつらく当たられてばかりの仕事を担当していたり、
ある人は台風の目みたいな奇跡的な晴れ間のポジションに
たまたまいたりするわけです。

また、どんな仕事でも、万人がやりがいがある部署を担当する
ということはありえないでしょう。
働かせ方によって、ストレスが軽減して危険性が低くなるということは、
100時間の時間外労働の場合は現実的ではありません。

このような働かせ方をする企業は、労働者に甘えているわけです。
その人の生活を考えないで働かせてしまっているわけです。

少なくとも時間の規制をしなければならない
ということになると私は思います。

まずは、時間外労働を規制していく
これは、わかりやすいことです。

その上で、労働の質も検討していく
その他のストレス要因の軽減も検討していく
そういう順番になることは事の性質上必要だと思います。

月当たり100時間の時間外労働に対して
社会的に否定的評価を加えていくということは、
軽視されたり、否定されたりしてはならないことだと
私は思います。

【付録】
自己防衛を可能にする観点からの100時間の時間外労働

100時間働くということは
平日10時間+数時間会社に拘束されているわけです。
慢性的な睡眠不足と併せて、
脳が疲労していきます。

あまり複雑なことを考えることができなくなります。
将来的な見通しや、人間の感情を考える能力が
極端に低下していきます。

そうするとどうなるでしょうか。
目の前の課題を言われたままに
無感情でこなしていくことが精いっぱいになります。

上司の言うことに疑問を持つ思考が働かないし、
仮に変だなと思っても逆らおうという気力が失われてしまいます。

その延長上で、自分の体調や考えが
自分の行動原理にならず、
「会社は、自分にどう行動してもらいたいか」
ということだけを考えるようになります。

目の前の課題をこなすことがルーティンになるわけです。

それができなければ「自分に能力がない」
「自分が悪い」という考えに逃げ込んでいきます。
その方が楽だからです。

もともと血管疾患や精神疾患は
自分の病気の程度やそもそも発症の有無についても
致命的な状態になるまで自覚症状はありません。

そして、そういう会社に情動を支配されているような状態になれば
自分の異変も、自分に能力がない、自分が悪い
ということに逃げ込んでしまうわけです。

だから過労死、過労自死をするわけです。
その前に、今の状態を自分本位で考えられなくなっているからです。

何が何でも時間外労働100時間は悪だと
もう一度言わせていただきます。