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【認定報告】地公災基金審査会で逆転認定。職場内暴行被害後、上司の事件隠ぺいによってうつ病を発症した生存事案(時間外労働40~70時間) [労災事件]

このたび、地方公務員災害補償基金審査会(再審査請求)で
逆転で公務災害認定を受けましたのでご報告します。

1 被災公務員
  当時30代男性 
2 被災内容
 第1事件、暴行事件 
   平成23年、職場内で同僚職員から、
   胸ぐらをつかまれ前後に揺さぶられたことにより頸椎捻挫を発症した。
   (刑事事件となり罰金刑が確定)
 第2事件 上司の隠ぺい工作
   職場管理者は、事件をうやむやにしようと
   加害者を懲戒することも指導することもさえもせず、
   被害者に対して、「あなたにも責任がある。加害者に謝罪するように。」
   という理不尽な対応をし、
   公務災害申請をしようとしていた被害者を、
   公務中にもかかわらず幾度となく呼び出して、
   公務災害申請をするな、加害者に謝れと
   毎回1時間2時間に及ぶ説得を繰り返した。
   累積説得時間と被害者公務員の精神状況の悪化は
   カルテ上見事に対応していた。
   最終的には、加害者は職場にいさせたまま
   被害者に対して転勤を希望するよう迫った。
   この結果、重篤なうつ病となり、現在もその症状に苦しんでいる。
3 公務災害申請
  平成24年公務災害申請申請
  平成27年公務外認定
  平成27年支部審査会に審査請求
  平成28年棄却
  平成28年再審査請求
  平成28年9月 逆転認定

4 支部審査会
  宮城県支部審査会は、上司の上記一連の行為は、
  上司の保身のための行為であることを認定していながら、
  ひどい嫌がらせには該当せず、
  あつれきやからかいのレベルに相当する旨判断して公務災害とは認めなかった。

5 再審査請求の主張のポイント
  平成24年3月16日地基補第62号補償課長名の
 「『精神疾患などの公務災害の認定について』の実施について」
  という通達があります。
  これに照らして、本件上司の行為が「ひどい嫌がらせが執拗に行われた」
  というカテゴリーに該当するということ、相当因果関係が認められること
  を強調して主張しました。

6 審査会の逆転認定論理
  上司の上記行為を認定し(争いはない)、
 「本件暴行の被害者である請求人に対する
  管理職の対応としては不適切なものであり、
  請求人は、職場で執拗な嫌がらせを受けたものと認められる。」 
とドンピシャで認められました。

7 なぜ、2回認められなかったものが3回目で認められたか
  公務員側の請求は一貫していて全くぶれませんでした。
  このため、判断する側の問題であることは明らかです。
  1回目の支部長判断では、
  上司の隠ぺい工作を評価の対象として検討しませんでした。
  2回目の宮城県支部審査会判断では、
  学校や生徒を思いやっての行為ではなく
  上司の保身に基づく行動だと認定していながら、
  それがからかいや軋轢にとどまると判断しました。

  怪我の具合が悪く痛みと戦いながら公務に従事している中、
  公務災害も、相手の損害賠償も十分行われないで、
  このまま働けなくなったらどうしようと思っているのに、
  それも、上司の保身で行っているとしながら、
  「からかい」や「あつれき」ということで済まそうとした
  支部審査会の態度は問題だと思います。

  では、なぜ認められたかというと、
  審査会が、きちんと通達などを熟知していて、
  こういう出来事があったら、こういう感情となる
  という人間の当たり前を認定できたからだと思います。

  また、対人関係学的な説明を補充して
  からかいと軋轢のレベルを超えているということを
  丹念に主張したことも貢献していると思います。

8 感想
  一つには、労働組合の支援が適切に行われたということです。
  被災公務員がなぜうつ病を発したかというその理由の本質は、
  上司の隠ぺい工作によって
  職場の中で、自分が尊重されていない、仲間扱いされていない
  という孤立無援感を抱いたことにあります。

  公務災害認定の闘いはこれと全く逆に
  労働組合の仲間が(OBも活用して)、
  被災公務員を支援し、
  弁護士との打ち合わせにも同行し、
  手厚く丁寧に支援したことによって
  最後まで頑張り抜くことができたのだと思います。

  そして特筆するべきは、被災公務員の妻です。
  徹底して、献身的に、仕事も家庭も公務災害も
  一緒に苦しみ、一緒に頑張った、よく頑張られたと思います。
  お二人が、一つのチームとして強く暖かく歩くことができたことこそ
  何よりの力だったと思います。
  これまでの数年間の泣き笑いは、まさにドラマでした。

  もちろん、代理人も頑張りましたとも。

  時間外労働が多くなくてもうつ病にかかります。
  通達や法律を丹念に調べ上げて、
  そこに人間の血を通わせることができれば
  公務災害は認定される可能性が生まれる
  ということが、今回の公務災害逆転認定の教訓だと思います。

  ただ、認定まで5年が経過してしまいました。
  うつ病が公務災害だと認められてこなかったため、
  被災者は、療養のための休暇を
  自分の有給休暇を消化しなければなりませんでした。

  公務外の決定がなされるたび、
  絶望の淵に叩きつけられてきました。

  公務災害を申請する責任者である当の上司が
  これを妨害し続けたことになります。
  なんらかの手立てが必要になると痛感しています。