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離婚をしたくないのに離婚調停が申し立てられた場合、何をどうするべきなのか。特に「法律の趣旨が形骸化されている場合の現実の離婚調停」にどのように対処するべきか。 [家事]



<離婚調停申立書には離婚理由について何が書いてあるのか>

離婚調停申立書は、離婚理由をいくつか挙げて、それに〇をつけさせる書式を裁判所が用意しています。ちなみにその項目としては、
1 性格が合わない
2 異性関係
3 暴力をふるう
4 酒を飲みすぎる
5 性的不調和
6 浪費する
7 病気
8 精神的に虐待する
9 家族をすててかえりみない
10 家族と折り合いが悪い
11 同居に応じない
12 生活費を渡さない
13 その他
です。

弁護士をつけなくても離婚調停を申し立てやすくするために、アンケート方式で理由を記載するという形になっているのだと思います。弁護士が付いていても、このアンケート回答だけしか離婚理由が開示されない場合も多くあります。

<離婚調停第1回期日行われていること>

これだけで離婚調停を進めるというのではなく、調停委員(年配の男女が調停委員として、一つの事件に配属され話し合いを進行します。裁判官は別室に待機しており、調停委員2名と裁判官の3名で調停委員会を構成します。)が、先ず申立人から話を聞いて、丸を付けた項目を具体的に尋ねて行くわけです。

ここで聞いた事情について、相手方に伝えるか伝えないかは、申立人の要望と調停委員の判断で決められます。だから、最後まで、どうして離婚をしたいのか相手方がよくわからないまま調停が進められることが少なくないように思われます。

<法律が想定した離婚調停の進め方>

離婚をしたい場合でも、最初に離婚訴訟を提起することはできません。先ず、離婚調停(夫婦間調整調停・離婚)を申し立てなければならず、これを「調停前置主義」と言います。

調停前置主義が定められた理由については、いくつか説明の方法にバリエーションがあるようです。
A)家族間の紛争は、一般的に他人に知られたくないことであるから、公開の法廷(裁判は公開で行うことが憲法上定められています)で裁くことは不穏当であり、先ず非公開の調停制度で話し合って相互に譲り合って解決することが穏当であること。
B)家族間の紛争は、家族という形態にも家族関係にもその家庭によっていろいろなものがあり、また紛争についても権利というよりも感情という要素が大きな位置を占めるため、必ずしも、国家(裁判官)による客観的にどちらの言い分が正当かという判断になじまない要素が多いと判断し、先ず当事者の話し合いによって解決をする方が結果の妥当性を得られること。
C)家族の問題は、法的に離婚等の結果が出ても、未成年の子がいる場合等、離婚後も何らかの関係が継続することが想定されるため、紛争を先鋭化しかねない訴訟よりも、話し合いで解決して離婚後の最低限度の信頼関係を維持するべきだということ。

離婚が、一般にそういうものですが、特に家庭裁判所に持ち込まれるときは、離婚をしたい方と離婚をしたくない方と意見が対立していることが一般的です。中には、離婚は良いけれど、慰謝料や親権は争うというパターンもあり、表面的には少なくない争いのパ田0ンですが、実際は離婚をしたくないという感情があるために争いになることが多いのではないでしょうか。

さて、話し合いで解決する場合は、このように意見の対立がそもそもあるのですから、離婚をする、離婚をしないというどちらの結論となっても、常に一方には不満が残ることは仕方がないことです。それでも、双方がある程度納得して離婚を決めるという作業が、話し合いということになるはずです。

そうすると、調停では、離婚をしたい申立人が離婚をしたいという自分の感情と、その感情の出どこを相手になるべくわかりやすく告げるという作業が求められます。相手は、どうして申立人が離婚をしたいのか、先ずはじっくり話を聞いて、冷静に相手の身になって考えることが必要になるでしょう。

<離婚をしたくない場合の必須の相手方の態度>

そうして、それでも離婚をしたくないと主張するのであれば、
①離婚を決意させた申立人の感情の部分に対してどのように手当てをするのか提案をすることになるでしょう。自分の改める部分をどのように改めるか、なるべく具体的に説明していくことが求められると思います。
②また、相手に誤解があるならば、それは誤解であると説得的に説明する必要があります。説得的ではない説明とは、言い訳にしか聞こえない説明で、要するに嫌な思いをこれからもすることになりそうだと申立人が思ってしまうような説明です。
③それから、どうして自分が離婚をしたくないのかを説得力を持って説明する必要があるわけです。ここでいう説得力がある説明というのは、申立人が自分が必要とされていて、尊重されるべき人間だと思われているという説明です。「離婚をしたら子どもがかわいそうだから」ということがよく言われるのですが、現実問題として説得力がないばかりか、逆効果になることが多いようです。どうも現代日本社会というのは、妻、母といった役割の評価というよりも、一人の人間としての評価を皆さん求められているようです。

お互いに自分の気持ちを相手に理解させようと努力して、お互いが相手の気持ちを理解しようとして、それをお互いに示して、話し合いをして、結論にたどり着くということが調停で行われるべきことになると私は思うのです。

<法の趣旨が形骸化されている現実の調停のパターン>

<パターン1 話し合いの拒否>
家裁の調停は、多くのケースで、調停委員は申立人から話を聞きます。アンケート方式で記載された理由について、〇をつけているだけでは、相手方は通常納得せず(暴力や浮気の場合はともかく)、ある程度具体的に言われないと申立人の心情がわからないからです。そして、申立人の話を聞き終えたら、今度は相手方から話を聞くというターンになります。

しかし、最近多いケースは、調停の初日から、調停委員が、相手方に対して、「申立人の離婚の決意は固いようです。あなたのお気持ちはどうですか。」と尋ねて、相手方が「離婚は考えていない。離婚したくない。」等というと、調停委員が「それでは平行線ですから調停では決まりませんね。別の手続き(裁判)に移行することになるでしょうね。」と言って、第1回期日で調停を打ち切るというパターンが少なくないようなのです。

家庭裁判所に離婚調停を申し立てるのですから、離婚意思が固いことは当たり前のことです。これは誰でもわかることです。それでもまず話し合いをしましょう、お互いを少しでも理解して話し合いで解決しましょうということが法の趣旨ですから、離婚意思が固いから裁判にしてくださいでは法の趣旨に反していることになると私は思います。

裁判でも離婚の意思が固い場合は離婚が認められる傾向が見られます。これでは、離婚を強いられた相手方は重大な精神的打撃を受けてしまいます。ここは何とかしなくてはなりません。

<パターン1の対処方法>
相手方は、「はじめから離婚は絶対しない」ということは離婚に行く近道を自分から作ってしまうことになります。少し引いて考えることが必要となります。そもそも結婚生活の維持は、一度合意があっただけでなく、その合意が継続していることが必要であると考えるしかありません。そうだとすると、誤解でも勘違いでも言いがかりでも、夫婦の一方が「離婚をしたい」と言っているのですから、夫婦である以上相手の気持ちには真剣に向き合わなければなりません。またそれをすることが、ここまで来た以上、やり直すという少ないチャンスを勝ち取るための必須の前提となることが、「申立人の離婚の理由を聞きたい。申立人の離婚の理由を自分なりに考えて、仕方が無いと思ったら離婚を考える」ということを言うべきです。

バリエーションとして、「離婚をしたいということはある程度分かった。ただ、子どものことが気がかりだし、子どもに対して親として責任もある。子どもとの交流がどのように図られるのか、その点が解決できれば離婚を考える。」という言い方もあります。

弁護士がいれば、調停前置主義をとうとうと語るパターンもあります。

<パターン2>

パターン1と実はセットになっていることが多いのですが、申立人が離婚をしたい理由を明かさないことが少なくありません。抽象的なDVがあったとか、精神的虐待だとか、中には身体的暴力があった等ということを言いますが、そこで終わりとなることが多いです。さらに突っ込むと、「これまでの積もり積もった結果である(いちいち個別の出来事は覚えていない)。」という回答がなされることが、実際にパターン化しているような印象です。

具体的に言えない事情は様々で、多いのは該当事実が無かったことです。「言ったら逆上される」と心配しているわけではありません。敵意はむき出しなので、その心配をしているわけではないと思います。

該当事実が無いパターンもいくつかバリエーションがあって、①端的に理由が無い(自分の失敗の隠ぺいや、自分の不貞を隠すような場合もあるのですが、どうして自分が離婚をしたいのか自分でもうまく説明ができないことが多いと思います)場合、②弁護士が十分な聴取を行わないことによる要約ミス(つまりどうして離婚したいかという事情聴取が不十分である場合)、③思い込みDVの場合(なんとなく嫌になったし、何か理由があったはずだという漠然な思いと漠然とした記憶がある場合) ②のパターンも結構あり、粘り強く聴取をしていくと、少しずつ離婚をしたい理由が理解できてくることが多いと思います。ここでも、なんとなく離婚したいという人はいないということを前提に、依頼者の人間性を信じて聴取をすれば、それに賛成はできなくても、なるほどその人は離婚したくなるかもしれないというところまでは到達するはずです。「どうせDVがあったのでしょ。」という態度では、依頼者を理解することができないばかりか、離婚訴訟において足をすくわれかねないという問題も起こしかねません。

<パターン2の対処法>
とにかく断片的でもよい、時期的、場所的にあやふやでもよいから何らかの具体的なエピソードを引き出す。

<パターン3>

パターン2の続きなのですが、
申立人から出てきた離婚をしたい理由が、①相手方にとって身に覚えのないこと、②それらしいことはあったけれど、事実は申立人の主張内容と違うこと、③離婚理由となるのだろうか疑問のある相手方の落ち度が主張されること

これは、調停制度の問題というより、背景として裁判離婚の判例の問題なので、対処方法を早速

<パターン3の対処方法>

離婚に応じるか否かということは、自分の人生の根幹にかかわることであるので、真剣に考えようとしている態度は見せる必要があります。しかし、だからと言って、間違っても好戦的な、攻撃的な態度をしてはならないということです。あくまでも穏やかに対応する必要があるということが必須の前提です。「理由がわからないのでは応じられないではないか。」という当たり前のことをストレートに言うのは、良策ではありません。

一生懸命真面目に相手の言い分を理解しようとする態度を徹底しましょう。そして、相手の言い分にまず反発することをしないで、そこに何かしらの相手の気持ちが隠れていないかを検討することが大事です。しかし、これはなかなか難しいことです。人間も動物も同じでしょうが、自分が攻撃されていると認識すれば、何とか自分を守ろうとするのが、生き物の特徴だからです。普通の行動パターンは誰でも反射的な反発を起こします。こういう場合、弁護士が一緒にいると、反射的な怒りを抑えてもらい、少し検討するために時間をもらうということができるわけです。調停期日における弁護士の役割などというものは、当たり前の反応をする前に理性的に考えてみることに誘導することが大半なのかもしれません。

ここから先は一応言いますが、ご自分でそれができるかなかなか難しい分野に入ります。まず考えなければならないことは、心の赴くまま相手を攻撃してしまわないこと、あくまでも相手を尊重している様子を見せること、相手に安心して本音を出してもらおうとすることです。

①身に覚えのないことと②それらしいことに心当たりがある場合
身に覚えのないことを言われた時こそチャンスです。もちろん、事実に無いことは事実に無いということは必須だと思います。問題は、事実に反することを言ったと申立人を責めないことです。
まずは、そのものズバリではなくそれらしいことに身に覚えがないかどうかを考えることです。そしてそれらしいことがあれば、実はこうだったのを甲受け止めて記憶してしまったのではないかという説明をしてあげることと、事実に反した出来事だとしても、申立人の感情を思いやることができます。
全く事実が無い場合も結構無いわけではないのですが、「思い込みDVhttps://doihouritu.blog.ss-blog.jp/2023-03-14#:~:text=%E3%80%8C%E6%80%9D%E3%81%84%E8%BE%BC%E3%81%BFDV%E3%80%8D,%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%80%82」の説明などを参考にして、どうしてそう勘違いしてしまったのかを考えて、自分がこうすればそういうことはなかったと思うという二人の問題だったということを説明することが一つの対処方法です。
いずれにしても、申立人は離婚をする気が満々ですから、ただ否定するというよりも、そのものずばりの証拠が無いとしても客観的な状況証拠をできるだけ提出することが求められると思います。

③離婚理由になるのか疑問なこと
これも代理人がいれば、逆に落とされてしまう危険があるのですが、案外一般の我々も他人には理解できない大切にしていることというものがあって、例えばペットだとか、例えば愛車等の所有物に関してとか、例えば子どものこと(これはわかりやすい。)だとか、そういうことで相手に安心感が持てなくなり、一緒に生活できなくなるということが案外あるようです。

ここも、むしろ、申立人代理人よりも自分が申立人を理解しているということを示すチャンスです。
この場合は、「自分としてはここまでやった。しかし、足りなかったという結果を重く受け止める。本当はこうすればよかったのかもしれない。」等という対処方法を考えると思います。

一件それが離婚理由になるのか、おそらく裁判所でも疑問を持つでしょう、裁判所でも自分の代理人も取り上げないところをこちらが取り上げるということはポイントになるようです。

繰り返しますけれど、調停は、相手に対して自分に関する安心感を持ってもらう材料の宝庫です。しかし、自分を守るという当たり前の防御態勢が作られているとそれがなかなか見つからないし、見つけようとしなくなってしまいます。だから、代理人と一緒に調停に臨むことが有効になるのだと思います。



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